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      4月12日の小話 
      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
          
      制作: 世界名作福袋   朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ  絵 : Taku 
      気のきく男 
         
        ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
          
           
          制作: 世界名作福袋   朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ  絵 : Taku 
      
      
       ある殿さまの家来に、大変気のきく男がいました。 
        
               殿さまはその男の事を、客が来るたびに自慢します。 
        「あの男の気がつくこと、気がつくこと。 
         朝起きると、すでに洗面の用意が出来ておる。 
        
               そして顔を洗っている間に、茶をくんで来てくれる。 
        
               たばこを吸いたいと思えば、目の前に、すーっと、たばこが出てくる。 
        
               手紙を書こうと思えば、スズリと紙が、すーっと出る。 
        
               いやはや、これほど気がきく男はないわい」 
         
         ところが、ある日の事。 
         殿さまが朝起きると、どうも気分がすぐれません。 
        「ああ、頭が痛い。 
         それに寒気がする。 
         ・・・はて、この様な大事な時に、あの男はどこへ行ったのであろう?」 
        
               殿さまがそう思っていると、男が帰ってきました。 
        「これ、そちは、朝からどこへ行っていたのだ」 
        「はい、ゆうべから殿のお顔の色が悪く見えましたので、医者を呼びに行って来ました」 
        
              「おう、よく気がついたぞ。さすがじゃ」 
         
         それから殿さまは、四、五日、医者の薬を飲んでおりましたが、病気はいっこうに良くなりません。 
        
              「ああ、今日は特に気分が悪い。あの男は、どこへ行ったのだ?」 
        
               すると男が、帰って来ました。 
        「これ、そちはどこへ行っていたのだ? 医者でも呼んできてくれたのか?」 
        
               すると男は、こう答えました。 
        
              「はい、殿のお命も残り少ないと思い、お寺に行って葬式の準備をしてまいりました」 
      ♪ちゃんちゃん 
            
        制作: 世界名作福袋   朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ  絵 : Taku 
         
       
        
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