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7月13日の小話
紙のふんどし
何日も飯にありつけないでいた浪人(ろうにん→お城で働いていない武士の事で、たいていが貧乏)が、隣の家へ食事に呼ばれました。
「さあさあ、ただの麦飯だが、遠慮無くお食べなさい」
「これは、かたじけのうござる。それでは、お言葉に甘えまして」
さて、この浪人の食べる事、食べる事。
「すまぬが、おかわりを」
「はい。もっと食べてくださいな」
「すまぬが、もう一つおかわりを」
「はいはい、まだありますからね」
「すまぬが、もう一つおかわりを」
「はい、どうぞ」
「すまぬが、もう一つおかわりを」
「・・・はい」
「すまぬが、もう一つおかわりを」
「・・・・・・」
浪人は隣の家の人が心配するほど食べて、まだおかわりを頼みます。
すると、浪人お腹がどんどん大きくなり、やがて、
パチン!
と、大きな音を立てました。
それを聞いて、家の人はびっくりです。
あまりにも食べ過ぎたので、浪人の腹が破裂したと思ったからです。
「たっ、大変だ! 急いで、手当をしないと! さあ、まずは、帯をときなされ」
すると浪人は、決まりが悪そうにポリポリと頭をかいていいました。
「心配ない。さっきのは、金がないので紙で作ったふんどしのひもが、食い過ぎて切れた音じゃ」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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