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8月12日の小話
これっきり
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投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
お面を売っている屋台(やたい)の前で、子どもがだだをこねていました。
「もっと欲しい、もっと欲しいよ。もっと買ってよー」
「おいおい、欲しいったって、鬼の面は買ったし、ひょっとこも、おたふくも、うさぎも、キツネも、タヌキも、ここにあるのはみんな買ったじゃないか」
父親が言うと、屋台の親父も言いました。
「坊や、これっきりしかないんですよ」
すると息子は、
「じゃあ、これっきりを買うよ。これっきりが欲しい」
と、言いました。
そして父親も、
「そうか。親父、これっきりを、一つくれ」
と、言ったそうです。
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