福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 12月の江戸小話 > えんまの考え
12月1日の小話
えんまの考え
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
この頃は病気で死ぬ人が少なくなってきたので、地獄がひまになりました。
そこでえんま大王は、鬼たちを集めて相談をしました。
まず、赤鬼(あかおに)が言いました。
「地獄がひまになったのは、医者が病人を残らず治してしまうせいです。医者という医者を、みんな地獄へ連れてきましょう」
「それは、名案だ」
青鬼も、賛成しました。
「どうでしょう。えんまさま」
鬼たちがたずねると、えんま大王は首を横に振りました。
「いや、それはちと、考えものだぞ」
「なぜで、ございますか?」
「よく考えてみろ。医者が薬のさじかげんを間違えたり、見たて違いをしてくれるおかげで、本当は死ななくてもよい人間が、ここにやってくるのだ。やぶ医者までが一人残らずいなくなっては、ますます困る。連れてくるのは、くれぐれも腕の良い名医にかぎるぞ」
おしまい
|