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12月1日の百物語

お化け見物

お化け見物
三重県の民話三重県情報

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おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
お化けの折り紙おばけ

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「櫻井園子」  櫻井園子エス代表 《櫻井園子キャンドルWEB販売》

♪音声配信(html5)
朗読者 ; おはなし パタくん

 むかしむかし、伊勢の国(いせのくに→三重県)の津(つ)というところに、一人の侍が住んでいました。
 とても変わった男で、お化けや幽霊が大好きなのです。
 お化けや幽霊も、その事を知っているのか、この侍の家には、毎日の様にあやしい事が起こる様になりました。

 ある晩、侍が夜中にふと目を覚ますと、座敷の方から何やらにぎやかな音が聞こえてきます。
「はて? こんな夜中に何だろう?」
 侍が座敷へ行ってみると、たんすの引き出しが一人でに開くと、中から出てきた着物がヒラヒラと踊っているではありませんか。
 お化け好きな侍は、それを見ると手を叩いて喜びました。
「よっ、いいぞ。もっともっと、踊れ」
 するとそのうちに、部屋にあった机やざぶとんも、ピョンピョンと踊りはじめます。
 そして棚にかざってあった人形までもが、輪になって踊り出しました。
 侍は、いよいよおもしろがって、
「おい、火ばち。じっとしていないで、お前も踊れ」
と、言うと、重い火ばちもフワフワと浮かんで、ゆらゆらと踊り出しました。
 そのうちに、酒どっくりも踊り出したので、侍が、
「こら、お前は踊らんでもいい。それよりも、わしのさかづきに酒をつげ」
と、言うと、酒どっくりは仕方なく宙に浮いたまま、侍の持つさかづきに何度も酒をつぎました。
 これには、お化けも弱ってしまい、踊っていた品物は次々と元の場所へ帰って行きました。
「なんだ、なんだ。もう、おしまいか? どんなお化けか知らんが、なさけないやつだ」
 侍はそう言うと、そのまま大の字になって寝てしまいました。
 人をおどかすお化けが、人に喜ばれては立場がありません。
 お化けたちはそれからというもの、侍が家にいる時に出て来る事はありませんでした。

 ところが侍が殿さまにお供で、遠くの国へ出かける事になったのです。
 するとその晩、さっそくお化けたちは大騒ぎを始めました。
 夜中に座敷の方で何やら騒がしい音がするので、奥さんや家の者たちが行ってみるとどうでしょう。
 着物や家の道具だけでなく、一つ目小僧やろくろっ首にカラカサお化けまでもが、陽気に踊りまくっているのです。
 みんなはびっくりして、その場に腰を抜かしてしまいました。

 時が過ぎ、やがて一番鳥が鳴き出すと、お化けたちの姿はすうっと消えて、着物も家の道具も元のところにもどって静かになりました。
「やれ、やれ、助かった」
 みんなはほっとして、お互いの無事を喜びました。
 しかし考えてみると、この家のお化けは、ただ踊るだけのゆかいなお化けで、踊り終わった後は、きちんと後片付けもするし、物を壊したり人に怪我をさせるわけではありません。
 そこで奥さんが、こう言いました。
「こんな事ぐらいでおどろいていては、主人に申し訳がありません。今夜はひとつ、みんなで腰をすえて、お化けの踊りを見物しましょう」
「なるほど、奥方のおっしゃる通りだ。
 御主人がきもっ玉の太い人として有名でも、家の者が腰抜けでは世間の笑い者になる。
 それにもし何かがあれば、みんなでお化けをやっつけようではないか」
 家の者たちも、覚悟を決めました。

 さて、その晩は家中の者が座敷に集まって、お化けが出て来るのを待つ事にしました。
 奥さんは、眠そうな子どもたちも座敷に座らせて、
「もうすぐ、おもしろい物が見られるからね」
と、子どもたちをはげましました。
 やがて真夜中になると座敷の戸がすうっと開いて、奥さんの着物が出て来ました。
 続いて女中さんや子どもの着物が出て来ると、着物たちはみんな輪になって、ゆらりゆらりと踊り始めました。
♪ピー、ピー、ピイヒャラリー
♪ピイヒャラリー、ピイヒャラリー
♪ドンドンドン。
 お祭りの様な音がしたかと思うと、座敷にあった道具が次々と宙に浮かび、台所のなべまでが飛んで来ました。
 そのにぎやかな事、子どもたちも奥さんも家の者たちも、その不思議な出来事に大喜びです。
 そしてお化けが小鬼の姿になって座敷に現れると、みんなは大きな声で、
「よっ、待ってました」
と、大きな拍手です。
 人間に大喜びされたお化けは、くやしいやらなさけないやら。
(何て奴らだ。ゆうべはあんなに怖がっていたくせに。まったく、この家の連中は)
 それでも、しばらくは意地になって踊っていたのですが、やがて宙に浮いていた物たちが元の場所へ帰って行き、座敷の中は静かになりました。
「あれえ、今夜はもうおしまいか?」
「そうだ、そうだ。せっかく、おもしろくなってきたのに」
「おい、お化けたちよ。頼むから、もう一度出てくれよ」
 家のみんなは口々に言いましたが、お化けが出て来る事は、二度となかったそうです。

おしまい

※ この朗読は、以下の方により、ご提供を受けた作品です。

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