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10月29日の日本民話
金魚に取りつかれた若者
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むかしむかし、敦賀(つるが)の浜の浦底(うらそこ)の里に水のきれいな大池があって、赤白斑(あかしろまだら)の美しい金魚が住んでいました。
誰もがその美しい金魚を自分の物にしたいと思いましたが、しかし村の長老たちから、
「あの金魚は、池の主のお使いだ。それを取るような事があれば、きっとたたりがあるぞ」
と、言われていたので、村人はみんなこわがって近よらなかったそうです。
ある日の事、漁師の猪之助(いのすけ)という若者が、たまたまこの池のそばを通りかかると、池の中から金魚たちのかなしい歌声が聞こえてきたのです。
♪出たいな、出たいな、この池を
♪早く出たいな、行きたいな
♪海をわたって、竜宮へ
♪月夜の晩に、行きたいな
この歌を耳にした猪之助は金魚に心を奪われて、毎日のように池をのぞきに行きました。
それを知った村人や長老は、
「猪之助、目を覚ませ。二度とあの池に行くな。命をとられてしまうぞ」
と、引き止めましたが、金魚にとりつかれた猪之助の耳には届きません。
そして十五夜の美しい満月の夜、池に出かけた猪之助は池のふちにぞうりだけを残して姿を消しました。
すると不思議な事に、その日から池の金魚もいなくなったそうです。
おしまい
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