福娘童話集 > 日本民話 > その他の日本民話 >大根川
第 226話
大根川
宮崎県に伝わる弘法大師話 → 宮崎県について
・日本語 ・日本語&中国語
むかしむかし、旅の途中の弘法大師がお腹を空かせていると、川で女の人が大根を洗っていました。
とてもみずみずしく、おいしそうな大根です。
大師はていねいに頭を下げると、女の人にお願いしました。
「すみません。長旅で、腹を空かせております。どうかその大根を、一本めぐんで頂けないでしょうか?」
すると女の人は、みすぼらしい大師を見て鼻で笑うと、
「はん。こじき坊主が」
と、わざと洗っていない、土のついた小さな大根を大師に投げ渡したのです。
「・・・・・・」
大師がとまどっていると、女の人は冷たく言いました。
「その大根は、土がついたまま食べるんだよ。いらないのなら、さっさと消えな」
「・・・・・・」
大師は無言で頭を下げると、その大根を拾わずに、そのままどこかへ行ってしまいました。
「あはははは。こじき坊主にも、少しは意地があるんだね」
その後姿にアカンベーをした女の人は、再び大根を洗おうと川の方を向いたのですが、不思議な事にさっきまで流れていた川の水が一滴もなかったのです。
「そんな、どうして?」
びっくりした女の人が、ふと足下を見てみると、足下に一枚の紙切れが落ちていました。
拾い上げてみると、そこにはこう書かれてありました。
《土のついた大根をそのまま食べるのなら、洗う水はいらぬだろう。空海(くうかい→弘法大師の名前)》
それ以来、この川の水は大根がとれる頃になると干上がったので、人々はこの川を『大根川』と呼ぶようになったそうです。
おしまい
|