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第 237話
ねじ金と妹とお母さん
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むかしむかし、高知県の須崎市(すさきし)というところに、ねじ金(きん)という、とても力持ちな男がいました。
ある日の事、村で相撲大会が行われたのですが、これにどこからかやって来た大男が飛び入りで参加したのです。
その大男はとても強く、村人がいくらかかっても相手になりません。
このままでは、その大男が優勝してしまうでしょう。
そこで村人たちは話し合って、ねじ金の所へ行って、相撲大会に出てくれるように言ったのです。
「ねじ金よ。いま相撲大会をしているのだが、飛び入りの大男がとてつもなく強くて、このままでは優勝するじゃろう。村人以外の者が優勝しては面白くない。そこでお前に、相撲大会に出てもらいたいのじゃ」
すると、それを聞いたねじ金は、
「なるほど。おれは、おれが相撲大会に出ても簡単に優勝してしまうので、それでは相撲大会が盛り上がらんと遠慮しておったのじゃが、そう言う話なら、喜んで出てやろう」
と、言うと、裏山で竹をへし折って手でしごくと、それをたすきにかけて出かけました。
さて、相撲大会の場では、ねじ金が来たいうのでいっぺんに盛り上がりました。
「ねじ金、負けるな!」
「ついでに大男も、がんばって殺されるなよ」
さて、いざ相撲が始まると、ねじ金はその大男のまわしをぐいっと掴んで、軽々と頭の上に持ち上げたのです。
「さあ、勝負はついたな」
ねじ金が頭上の大男に言うと、大男は首を振って、
「まだまだ。相撲は、体が地面に着くまでは負けではない!」
と、言うのです。
そこでねじ金が、頭上の大男を土俵にぶちつけると、
「ぎゃふん!」
と、大男は気絶してしまいました。
さて、このねじ金には妹がいるのですが、その妹も、ねじ金の様に力が強いので、年頃になってもだれも嫁にもらおうとはしませんでした。
そこで妹も、お嫁に行くのをあきらめていたのですが、ある日の事、金持ちの若旦那が、その妹を嫁に欲しいと言ってきたのです。
そして、嫁に行って間もなくの事です。
嫁ぎ先の旦那が庭先でお風呂に入っていると、急に雨が降ってきました。
そこで妹は、
「雨がかかると、体に悪いですよ」
と、旦那を風呂釜ごと持ち上げて、家の軒下へと運んでしまったのです。
すると旦那は、
「我が嫁ながら、なんて恐ろしい」
と、妹を実家へと帰らせたのでした。
すると、妹のお母さんは妹を叱りつけて、こう言いました。
「だからわたしは、お前に力を隠せと言ったんじゃ。女と言うものは、か弱くなくてはいかん。このわたしの様に」
そしてお母さんはそう言いながら、思わず、そばにあった鉄の火箸をバラバラに引きちぎったと言うことです。
おしまい
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