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第 247話
馬引きになった子ども
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むかしむかし、馬引きのお父さんとおかみさんと男の子が住んでいました。
馬引きとは、馬に荷物や人を乗せて運ぶ仕事です。
ある日の事、お父さんが病気になって、馬引きの仕事が出来なくなりました。
「仕方がない。わたしがよその家へ働きに行くから、お前はお父さんを見ておくれ」
おかみさんが出かけようとすると、男の子が言いました。
「おらが父ちゃんの代わりに馬を引くから、母ちゃんが父ちゃんの世話をしておくれ」
「とんでもない! お前みたいな子どもに、馬引きは無理だよ」
「大丈夫だい!」
男の子は馬小屋から馬を引っ張って来ると、荷車を引かせて家を出て行きました。
男の子は馬引きの親方の家へ行くと、元気良く頼みました。
「父ちゃんの代りに、おらに荷物を運ばせてください!」
しかし親方は、男の子を追い返しました。
「だめだめ。子ども何かに、馬引きが出来るわけないだろう」
追い返された男の子がしくしく泣いていると、よその馬引きが現れました。
「どうした小僧。何を、泣いているんだ?」
「うん。実は父ちゃんが・・・」
話を聞いた馬引きは男の子が可哀想になり、男の子を自分の親方の所へ連れて行って、男の子にも荷物を運ばせてくれるように頼んでくれたのです。
おかげで次の日から、男の子は働ける事になりました。
でも大きな荷物を乗せたり降ろしたりが出来ないので、男の子は小さな荷物だけを馬車に乗せてもらい、親切な馬引きのあとからついていきました。
さて、男の子が自分の家の前まで来た時です。
男の子が大きな声で、歌を歌いました。
♪馬引き稼業はしんどいけれど、みんなが喜ぶ良い仕事
♪今日もお馬に荷を乗せて、朝から晩まで働こう
「おや? なかなかに上手だな。だれに習ったんだ?」
馬引きが感心して言うと、男の子は胸を張って言いました。
「おらの父ちゃんがいつも歌っているのを、聞いて覚えたんだ」
「そうか、よく覚えたな。歌も荷物運びも、父ちゃんに負けないようにがんばれよ」
「うん!」
それからも男の子は、毎日毎日一生懸命に働きました。
でも、行く時も帰る時も自分の家の前を通る時は決まって大声で歌を歌うので、馬引きが不思議に思ってたずねました。
「ここへ来ると、歌を歌うのはどうしてだね?」
すると男の子は、うれしそうに言いました。
「おらが歌を歌うのは、『元気で働いています!』って、父ちゃんや母ちゃんに教えるためだよ」
「なるほど、お前は親孝行な子だ」
こうして男の子は、お父さんの病気が治っても馬引きを続け、やがてこの国一番の馬引きになったそうです。
おしまい
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