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第 320話
とんち小僧の扇子(せんす)
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むかしむかし、あるところに、とてもとんちが上手な子どもがいました。
あるとき、そのとんちが上手な子どもが、お城の殿さまからごほうびをいただくことになりました。
「欲しい物を、何でも申してみよ。遠慮はいらんが、ただし、わしが納得する物だぞ」
殿さまの言葉に、とんちが上手な子どもは少し考えました。
(お殿さまは、おいらを試しているのだな。欲張れば『それはダメだ』と言うだろうし、かといって遠慮をすれば損をするだけだ。殿さまに納得させて、少しでも良い物を手に入れるには・・」
とんちが上手な子どもは、やがて顔を上げてこう言いました。
「お殿さま。おいらは、この扇子にかくれるだけの田んぼが欲しゅうございます」
それを聞いた殿さまは、笑いながら言いました。
「なんじゃ、すいぶん欲のない奴じゃ。わかった、それが望みであれば、扇子にかくれるだけの田んぼをやろう」
「はい、ありがとうございます。さすがはお殿さま、子どものおいらに、これほどの田んぼをくださるとは」
とんちが上手な子どもは立ち上がると、お城の窓から扇子を伸ばしました。
すると田んぼどころか、その向こうの山や川までが扇子の向こうに隠れたではありませんか。
「うーん。そうきたか・・・」
さすがの殿さまも困ってしまいましたが、今さら約束を破ることは出来ません。
「お前のとんちは、本当にたいしたものじゃ」
殿さまは扇子でかくれた広い土地を、子どもに与えたということです。
おしまい
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