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2月28日の日本民話 2
人食いザメとお坊さん医者
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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしむかし、あるところに、医者としての腕の良いお坊さんがいました。
このお坊さんは、もともとはお医者さんだったので、みんなからお坊さん医者と呼ばれています。
ある日の事、お坊さん医者が渡し船に乗りました。
ところが船が海のなかほどまで来た時、急に動かなくなったのです。
「おい、船頭(せんどう→船長)よ、どうした? こんなところで止まっては、どうにもならんではないか」
お客さんが騒ぎ始めると、船頭さんは困った顔で言いました。
「実は、このあたりにはおそろしい人食いザメがいて、気に入った人を見つけるとこうして船を止めるのじゃ。きっとお客さんたちの中に、気に入った人がいるのじゃろう」
それを聞いて、お客さんたちは青くなりました。
「では、どうすればいいのだ?」
「すまんが、お客さんたちの持っている手ぬぐいを海へ投げてくれ。サメは気に入った人の手ぬぐいだけを沈めるから」
お客さんたちは仕方なく、手ぬぐいを海に投げました。
すると、お坊さん医者の手ぬぐいだけが、スーと沈んでいったのです。
それを見て、お坊さん医者が言いました。
「皆さん、安心してください。わたしは僧で医者、どちらも人を助けるのが仕事です。ここは喜んで、皆さんをお助けしましょう」
そしていきなり、海へ飛込んだのです。
人食いザメは待ってましたとばかりに、持っていた薬箱ごと、お坊さん医者を飲み込みました。
さて、人食いザメに飲み込まれたお坊さん医者は、人食いザメのお腹の中でジッと座ったまま考えました。
(ここから出るのは簡単じゃが、この人食いザメをこらしめなければ、いつまた人を食べたいと言い出すかわからない)
そこでお坊さん医者は薬箱を開けて、とびきりにがい薬をあたりかまわず塗りつけました。
さあ、驚いたのは人食いザメです。
おいしそうな人間を飲み込んだと喜んでいたのに、何とにがい事。
とうとうがまん出来ずに、お坊さん医者を吐き出してしまいました。
それを見た船頭さんはあわてて船をこぎ寄せると、みんなでお坊さん医者を船に引きあげました。
「よかった。よかった」
「それにしてもサメのやつ、よく吐き出したものだ」
そこでお坊さん医者は、人食いザメのお腹に苦い薬を塗りつけたことをく話してやりました。
「なるほど、これにこりて、もう二度と人を飲もうなんて思わんだろう」
「よし、お祝いだ」
浜辺に戻った船頭さんが、さっそく酒盛りの用意をしました。
みんなはお坊さん医者をまん中にして、踊りながら歌いました。
♪くやしかったら、飲んでみろ
♪サメもかなわぬ、お坊さん医者
♪ああ、こりゃこりゃ
すると、海の中からさっきの人食いザメが顔を出して、
♪お前みたいな、にがいやつ
♪二度とは飲むまい
♪ああ、こりゃこりゃ
と、歌ったという事です。
おしまい
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