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12月14日の日本民話 2
大蛇の塔
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むかしむかし、山代(やましろ)と呼ばれる里に、五郎という腕のいい大工がいました。
五郎の腕前はこの辺りでは有名で、いつしか代官屋敷の建て替えまで命ぜられるようになりました。
ある日の事、五郎は代官の一人娘である「お浪」と恋仲になりました。
お浪は山代小町と言われるほどの美人ですが、奇妙なうわさもあります。
その噂とは、
「お浪には、蛇の精がついている」
「お浪は、大蛇の住む池に毎朝かよっている」
と、いうものです。
五郎もこの噂を知っていましたが、お浪を思う気持ちは変わりません。
そしてある日、五郎はお浪との仲を許してもらえるよう、代官に願い出たのです。
しかし、いくら腕が良いからといっても大工との結婚を代官が認めるはずもなく、代官は他の代官の息子との縁組を決めてしまい、五郎とお浪を二度と会わさない様にしました。
するとお浪は大好きな五郎と会う事が出来ない悲しみに耐えられず、大蛇が住むという森の池に身を投げて死んでしまったのです。
お浪の死を知った代官は、五郎に恨みをむけました。
「お浪の死の原因は、全て五郎にある! お浪をそそのかした五郎を、この手で殺してくれるわ!」
しかしいくら代官とはいえ、理由もなしに五郎を殺すことは出来ません。
そこで代官は、五郎にこんな無理難題(むりなんだい)をいいつけました。
「お前に仕事を与える。一晩のうちに、お浪の霊を供養(くよう)する五重の塔を建てるのだ。だが、釘一本使ってはならぬ。しかし、くさび一本使う事は許してやろう」
いくら五郎が名人でも、一晩のうちにくさび一本で塔を建てる事は出来ません。
でも、塔を建てる事が出来なければ、代官はそれを理由に五郎を殺すでしょう。
(どうすれば良いのだ)
その夜、五郎が一人で悩んでいると空がにわかに曇り、黒雲がわきおこったかと思うと黒雲の中から一匹の大蛇が舞い下りてきました。
そして大蛇は、五郎に言いました。
「くさび一本を、すぐに作るがよい。そして目の前の五重の塔の頂上に登って打ち込め」
「五重の塔?」
五郎は辺りを見回しましたが、五重の塔など、どこにも見えません。
それでも大蛇に言われるまま、くさび一本を素早く作りあげました。
すると目の前の大蛇が姿を変え、白木の五重の塔になったのです。
五郎が急いで塔にあがってみると、頂上に一つの穴が開いています。
「これか」
五郎がその穴にくさびを打ち込むと白木の塔は金銀の光を放ち、お浪の霊を供養するのにふさわしい物となったのです。
翌朝、代官は一晩で立派な塔が出来ているのを見て驚き、それを作った五郎が恐しくなりました。
そして約束通りの塔を建てた五郎を、その場で切り殺してしまったのです。
すると急に空が曇って五重の塔は大蛇の姿に戻ると、五郎の死体をくわえて天のかなたに消えていきました。
そして夜になると、天の川に大蛇の姿が現れたのです。
「これは、五郎と大蛇のたたりだ! わたしが悪かった、許してくれ!」
代官は震えながらそう言うと、すぐに森の池のかたわらに社を建てて大蛇をまつり、あわせてお浪と五郎の霊もまつったのです。
するとその日から、天の川に大蛇は現れなくなったそうです。
おしまい
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