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4月8日の世界の昔話
ジメリのお山
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むかしむかし、あるところに、お金持ちと貧乏(びんぼう)の二人の兄弟がいました。
ある時、貧乏の方の男が山奥で仕事をしていると、向こうの方から人相(にんそう)の悪い男たちが十二人もやって来るのが目につきました。
「あれは、きっとドロボウに違いないぞ。つかまったら大変だ」
貧乏な男は荷物をやぶの中ヘ隠すと、自分は木によじ登って身を隠しました。
十二人の男たちは、近くのはげ山の前ヘ行くと、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、開け!」
と、叫びました。
そうするとたちまち、はげ山は真ん中からまっぷたつに裂けました。
そしてその中へ十二人の男たちは入って行きましたが、みんなが入ってしまうと山はひとりでに閉じてしまいました。
ところがしばらくすると山がまた口を開けて、中から重たい袋をしょった十二人の男たちが出て来るのです。
そして男たちが、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、閉まれ!」
と、言うと、山はピッタリと合わさって、入り口は消えてしまいました。
やがて十二人の男たちは、どこかヘ行ってしまいました。
十二人の男たちの姿がすっかり見えなくなると、貧乏な男は木から降りて来て、十二人の男たちの真似をしてみました。
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、開け!」
すると、さっきと同じ様に、山は口を開けました。
そこで貧乏な男が中に入ってみると、なんと中には銀貨や金貨がビッシリと詰まっており、その後ろには真珠(しんじゅ)や宝石が山の様に積み上げてあるのです。
「これはすごい!」
貧乏な男は金貨をポケットに詰め込むと、急いで外に出ました。
そして、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、閉まれ!」
と、言って山の入口を閉めると、大急ぎで家に帰ったのです。
貧乏な男はこの金貨で、家族にパンや服を買ってやりました。
山から持って来た金貨は少しだけだったので、金貨はすぐになくなってしまいました。
そこで貧乏な男は、お金持ちのお兄さんのところへ行くと、大きなますを借りて来て、今度はそのます一杯に金貨を取ってきました。
貧乏な男は、その金貨で新しい家を買いました。
またしばらくして、貧乏だった男は金持ちのお兄さんのところに、またますを借りに行きました。
ところが弟が急に家を買ったのを不思議に思ったお兄さんは、ますの底にタールを塗っておいたのです。
やがて返って来たますを見てみますと、ますの底に金貨が一枚張り付いているではありませんか。
お兄さんは、さっそく弟のところヘ出かけていくと、
「このますについていた金貨は、どこで手に入れたんだ! 白状しないと、役人にうったえてやるぞ」
と、おどかしました。
そこで弟は、今までの事を全て話しました。
それを聞いたお兄さんは、ウマに荷車をつないで山にやって来ました。
弟の様な少しずつではなく、荷車いっぱいの金貨を持って帰ろうと思ったのです。
さて、山の前ヘ来て、弟に教えてもらった通り、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、開け!」
と、呼びますと、山が口を開けたので、お兄さんは入って行きました。
「おおっ、これはすごい。宝の山だ!」
お兄さんは夢中になって、荷車に金貨をつめ込みました。
ところが、あんまり宝物に夢中になった為、山の入口を開く言葉を忘れてしまったのです。
「なんだったかな? バゼムの山や、バゼムの山や、開け!」
言葉が違うので、山の開きません。
「ジメリの山や、ジメリの山や、開け!」
やっぱり言葉が違うので、山は開きません。
あせったお兄さんは、思いつく限りの言葉を試してみましたが、どれも言葉が違うので山は開きませんでした。
やがて夕方になると、入口の外から声がしました。
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、開け!」
山の入口がパックリ開いて、十二人のドロボウが入って来ました。
そしてお兄さんの姿を見つけると、カラカラと笑いました。
「こそドロめ、とうとう捕まえてやったぞ。覚悟しろ!」
ビックリしたお兄さんは一生懸命に命ごいをしたのですが、ドロボウたちはその首をちょんぎってしまいました。
このお話しは、有名なアラビアンナイト「アリババと40人と盗賊」のグリム版です。
おしまい
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