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4月16日の世界の昔話

パンを踏んだ娘
イラスト Ellie  「インゲルの魂がカモメになって太陽に飛んでいく」

パンを踏んだ娘
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細

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投稿者 「あーる」  【眠れる朗読】

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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

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制作: ユメの本棚

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投稿者 「眠りのねこカフェ

♪音声配信(html5)
音声 まちゃりんの読んだり〜の♪

 むかしむかし、インゲルという、貧しい家の娘がいました。
 インゲルは、うわべばかり気にする様な心も貧しい娘です。

 さて、インゲルは年とともに美しくなり、上品な家庭で働く様になりました。
 ある日、主人が言いました。
「インゲルや、お前が来てからもう一年になる。お父さんやお母さんに会いたいだろうから、行っておいで」
 インゲルは貧乏な家には帰りたくないけれど、美しくなった自分を見せびらかしたくて出かけて行きました。
 でも、家の近くでたきぎ拾いをしていたお母さんを見た時、
「まあ、汚らしい!」
と、顔をそむけました。
 そしてとうとう、インゲルは家に帰りませんでした。

 二年目に、主人はまた言いました。
「お父さんやお母さんに会いたいだろう。ひまをあげるから、行っておいで」
 主人は、こんがりと焼けた大きくておいしそうなパンをお土産に持たせました。
 そして新しい服と、靴(くつ)も買ってくれました。
「まあ、すてき。わたしがどんなにきれいになったかを、見せに行きましょう」
と、インゲルが歩いて行くと、途中に沼がありました。
 沼の水はドロドロにあふれ、道の方までぬらしています。
「これでは、せっかくの靴が汚れてしまうわ。えいっ」
 インゲルは、ドロ水にパンを投げました。
 そして靴を汚さない様に、その上に足をのせました。
 すると、どうでしょう。
 インゲルはパンごと、ずぶっ、ずぶっと、沼の中に引き込まれたのです。
「助けて!」
と、インゲルは叫ぼうとしましたが、声が出て来ません。
 手も足も、凍り付いた様に動きません。
 とうとうインゲルは、沼の底まで沈んでいってしまいました。

 ふと目を開けると、目の前で沼女がくさいお酒をつくっていました。
 ちょうどそこに遊びに来ていた悪魔(あくま)のおばあさんが、インゲルを見るとニタリと笑いました。
「おや、なかなかいい娘じゃないの。もらっていこう」
 おばあさんは、心の貧しい人間を集めているのです。
 おばあさんの家の長い長い廊下には、目玉ばかりギョロギョロさせた人間の置物がずらりと並んでいました。
 その列の中に、インゲルも並べられました。
 インゲルの美しい服も髪も、今はドロまみれです。
 インゲルの美しい顔の上に、気味の悪いヘビやヒキガエルがベッタリとくっついていました。
 でもそんな事より、インゲルはお腹が空いてたまりません。
「ああ、この汚いパンでもいいから、食べたいわ」
と、手を足のパンの方に伸ばしましたが、どうしても届きません。
「お父さーん! お母さーん!」
と、呼んでも、誰にも聞こえません。

 その頃、地上ではインゲルのうわさが広がっていました。
 沼に沈むのを、ウシ飼いが丘の上で見ていたのです。
「バチ当たりめ、パンを踏むからさ」
「あの娘は、もともとそんな娘だったんだよ」
と、誰も良い事は言いませんでした。
 でも、その中でたった1人、話を聞いて泣き出した女の子がいました。
「可愛そうに。悪い事をしたら、謝っても駄目なの? その人がもし、この世に戻って来たら、わたし、お人形箱をあげるわ」
 やがてその女の子はおばあさんになり、神さまにめされました。
 おばあさんは神さまの前で、またインゲルの為に泣きました。
「わたしだって、インゲルの様な間違いをおかしたかもしれません。どうか、インゲルを助けてあげてください」
 その優しい心に、天使(てんし)の1人がホロッと涙をこぼしました。
 涙は沼に落ちて行って、インゲルの胸に入りました。
 やさしいおばあさんのおかげで、インゲルは地上に戻る事が出来たのです。
 でも人間ではなく、小鳥の姿になっていました。
 小鳥はお腹の空いた鳥たちにパンくずを拾っては与え、自分は食ベませんでした。
 そしてそのパンくずがドロ水に投げたパンと同じ量になった時、小鳥はカモメになって飛び立ちました。
 はるか、遠い太陽に向かって。
 それから、その鳥を見た者はいません。

おしまい

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