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 7月4日の世界の昔話
 
  
 レモンのごほうび
 インドの昔話 → インドの国情報
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
  むかしむかし、インドのお城に、ラブダ・ダッタという正直者の門番がいました。門番は貧乏で着る物がないので、雨の日も日照りの時も、毛皮を腰にまいた姿で門に立っていました。
 「あれは、何とまじめな門番だろう」
 王さまは、門番が気に入りました。
 そこで狩りに出かけるとき、王さまはその門番をお供として連れて行ったのです。
 
 門番は、はだしで腰に毛皮をまいたかっこうで、
 「やあ! やあ! たあっ!」
 と、棒を振り回してイノシシやシカをやっつけました。
 「おかげで、えものが増えたぞ」
 王さまは、大喜びです。
 
 ある時、王さまは隣の国と戦争を始めました。
 「王さま、わたくしもお供させてください」
 門番は、王さまにお願いしましたが、
 「だめだ。お前は、弓が使えないだろう」
 「はい。でも弓なんか使えなくても、大丈夫です」
 門番は太い腕を、王さまに見せました。
 「これで敵を、やっつけてごらんにいれます」
 そして戦争に行くと門番は棒を振り回して戦い、誰よりもたくさんの敵をやっつけたではありませんか。
 「なんと、いさましい男だろう」
 王さまは、また感心してしまいました。
 
 それから、数年がたちました。
 門番はあいかわらず、お城の門に立っていました。
 そんな門番を見て、王さまは、
 「あの門番はまじめだし、いさましい男だ。
 それなのによほど運が悪いのか、出世も出来ずにまだ門番だ。
 何か、ほうびをやりたいものじゃ」
 と、思いました。
 そして家来たちを大勢集めると、門番に言いました。
 「ラブダ・ダッタよ。何か、歌をうたっておくれ」
 「はい。わかりました」
 門番は大きな口を開けて、こんな歌をうたいました。
 ♪運の神さま えこひいき。
 ♪お金持ちには 親切で、
 ♪貧乏人には 知らん顔。
 ♪運の神さま えこひいき。
 王さまはおもしろそうに笑って、門番にレモンを一つあげました。
 
 「ごほうびは、レモン一つか。やっぱりわたしは、運が悪いんだなあ」
 門番がしょんぼりと門に立っていると、坊さんが声をかけました。
 「これは、見事なレモンだ。どうです。この着物と、取り替えてくれませんか?」
 「いいですとも」
 門番は喜んで、レモンと着物を取り替えました。
 その後、坊さんは王さまのところへ行ってレモンを差し出しました。
 「王さま。立派なレモンを手に入れました。めしあがってください」
 王さまは、そのレモンを見てビックリ。
 「ああ、あの男は、まだ運がむいていないなあ」
 実はレモンの中には、たくさんの宝石がつめてあったのです。
 
 次の日、王さまはまたみんなを集めて、門番に歌をうたわせました。
 ♪運の神さま えこひいき。
 ♪お金持ちには 親切で、
 ♪貧乏人には 知らん顔。
 ♪運の神さま えこひいき。
 門番がうたうと、王さまはうれしそうに笑いました。
 そしてごほうびに、またレモンを門番にあげました。
 「ああ、今日もレモンだった」
 門番はガッカリして、レモンを持ったまま門に立っていました。
 そこに、役人がやってきました。
 「なんと、見事なレモンだろう。王さまに、差し上げよう。どうだ、着物二枚と取り替えてはくれないか?」
 「いいですとも」
 門番は喜んで、レモンと着物二枚を取り替えました。
 王さまは役人が持ってきたレモンを見て、悲しくなりました。
 「どこまで、運の悪い男だろう。このレモンを、着物二枚と取り替えるなんて」
 
 また次の日、王さまはみんなを集めて門番に歌をうたわせました。
 そしてまた、ごほうびにレモンをあげました。
 それを見て、家来たちは不思議に思いました。
 「どうしていつも、王さまはレモンしかあげないのだろう? 王さまは、めぐみ深い方なのに」
 門番は、今度はレモンを王さまのおきさきさまにあげました。
 「おいしそうなレモンだこと。王さまが、お喜びになるわ」
 おきさきさまはそう言って、門番に金のかたまりをくれました。
 門番はその金のかたまりを売って、ごちそうをお腹かいっぱい食べました。
 
 「またか。何度やっても、宝石をつめたレモンが戻ってくるなあ」
 おきさきさまからレモンを受け取った王さまは、それでもまだあきらめません。
 
 次の日、王さまは、みんなを集めました。
 大臣も町の人々も、集まってきました。
 王さまはいつものように、門番に歌をうたわせました。
 ♪運の神さま えこひいき。
 ♪お金持ちには 親切で、
 ♪貧乏人には 知らん顔。
 ♪運の神さま えこひいき。
 「うまいうまい。それでは、ほうびをあげよう」
 王さまはいつもより、もっと楽しそうに言いました。
 「今度こそ、お金をどっさりあげるにちがいない」
 みんなは、ジッと王さまの顔を見つめました。
 ところが王さまがくれたのは、やっぱりレモン一つきりです。
 門番が受け取ろうとすると、王さまはわざとそのレモンを床に落としました。
 すると床に落ちたレモンはまっぷたつに割れて、中から光り輝く物がこぼれ出ました。
 「あっ、宝石だ!」
 「いっぱいつまっているぞ。これはすごい!」
 「お金より、ずっといいじゃないか!」
 みんなは、ビックリして言いました。
 門番はあっけにとられて、口もきけません。
 「そうだったのか。やっぱり王さまは、めぐみ深い方だったんだよ」
 家来たちは、口々に王さまをほめました。
 王さまは門番に宝石のつまったレモン一個のほかに、村を一つと金貨もたくさんあげたということです。
 おしまい   
 
 
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