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7月30日の世界の昔話
死に神の恋人
ジプシーの昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
むかしむかし、あるところに、女の人が一人で暮らしていました。
ある晩の事、誰かが女の人の家の戸を叩きました。
「はーい、どなたですか?」
「わたしは、旅の者です。遠い道を歩いてきて、へとへとに疲れています。どうか一晩、わたしを泊めていただけませんか?」
女の人が戸を開けると、そこには信じられないほど美しい男の人が立っていました。
「はい。こんな所でよかったら、どうぞお入りください。
残り物ですが、食事の用意をしますね」
女の人は久しぶりのお客さんに、とてもうれしくなりました。
「ありがとうございます。これでやっと、休むことが出来ます。このところ仕事がいそがしくて、休むのは千年ぶりです」
「まあ、千年ぶりだなんて、面白い人」
次の日、旅人が女の人に言いました。
「どうやら、もうしばらくは仕事を休めそうです。すみませんが、今日も泊めてもらえませんか?」
「ええ、喜んで」
女の人は旅人を好きになっていたので、うれしそうに言いました。
それからも旅人は、しばらく仕事を休んで女の人の家に泊めてもらいました。
旅人も女の人が好きになり、二人はとても幸せな日々を過ごしました。
そんなある晩、女の人は夢でうなされて目を覚ましました。
旅人は、女の人に優しく言いました。
「大丈夫ですか? とてもうなされていましたが」
「ええ、とっても恐ろしい夢を見たの。本当に、夢で良かったわ」
「それは、どんな夢ですか?」
「はい、あり得ないことだけど、夢の中のあなたはとても冷たくて、青白い顔をしていましたわ。そしてあなたが角笛を吹くと、大勢の死人があなたの後ろをついて行くの」
「!!!」
それを聞いた旅人は、びっくりした顔で立ち上がりました。
そして、かなしそうに言いました。
「残念ですが、あなたとはもうお別れです。早く仕事に戻らないと、この世が死人であふれてしまいます」
「えっ? それはどういう事? あなたのお仕事は、一体なんなの?」
「それは、言えません。それを知れば、あなたは死んでしまいます。わたしは、好きなあなたに死んで欲しくありません。・・・では、さようなら」
「待ってください! あなたがいなくなるのなら、わたしは死んだも同じです。お願いですから、あなたが何者なのか教えてください」
「しかし・・・」
「お願いします。このままあなたと別れるのは、死ぬよりもつらいです」
女の人は、そう言って涙を流しました。
「・・・わかりました。そこまで言うのなら、教えてあげましょう。
わたしの仕事は、死人をあの世に送ることです。
わたしは、死神です」
「ああっ」
女の人は驚きの声を上げると、その場に倒れて死んでしまいました。
おしまい
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