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10月8日の世界の昔話
死神のお使いたち
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むかしむかし、ある道を、とても大きな大入道(おおにゅうどう)が歩いていました。
そこへ現れたのが、人々に死をもたらす死神です。
死神は大入道の前に立ちはだかると、とてもいばって言いました。
「おれは、死神さまだ。そこの大入道、止まれ! ・・・と、止まれ、止まるんだ。ああっー!」
大入道は死神に気づかず、そのまま死神を大きな足でふみつぶしてしまいました。
大入道にふみつぶされてボロボロになった死神は、息もたえだえに言いました。
「ど、どうしよう? ここでおれが死んでしまったら、世界中の誰もが死ななくなってしまう。・・・まずい、それでは世界は、人であふれかえるぞ」
ちょうどそこへ、若くて元気な男が通りかかりました。
「ややっ、大丈夫ですか!」
男は死にかかっている死神をだきおこすと、持っていた薬を飲ませました。
すると薬が効いたのか、死神は元気を取り戻して男に言いました。
「おかげで、助かった。礼を言うよ。・・・しかしお前は、誰を助けたかわかっているのか?」
「いいや」
男は、首を横にふりました。
すると死神は、自分の正体を明かして言いました。
「お前には、本当に感謝(かんしゃ)しているよ。
このままでは、世界は大変な事になるところだった。
助けてくれた礼のかわりに、約束をひとつしてやろう。
お前が死ぬというその時に、おれがいきなり現われたら嫌だろう。
だからおれが行く前に、必ず使いの者をやるからな」
「なるほど、お前の使いが来ない間は、死なないというわけか。それは、ありがたい」
死神の約束に喜んだ男は、その日からだらけた生活を送るようになりました。
まずは、お風呂に入らない。
そして、歯をみがかない。
毎日食べるだけ食べて、お酒を飲めるだけ飲んで、運動もせずに寝てばかりです。
なにしろ死神の使いが来るまで死ぬ事がないのですから、どんなに不健康(ふけんこう)な生活を送っても平気なのです。
やがて、病気になりましたが、
「まあ、死神の使いが来ていないから、これで死ぬ事はないな。死神の使いが来るまで、いまの生活を楽しもう」
と、男は気にもしません。
そんな、ある日の事。
突然後ろから肩をたたかれた男は、ふり返ってビックリしました。
なんとそこには、あの死神が立っていたのです。
「さあ、今からおれについてこい。この世と、別れる時がきたんだ」
「なんだって! 約束が違うじゃないか! お前の使いなんか、一人も来なかったぞ! 使いが来るまで、死ぬ事はないはずだ!」
すると死神は、こわい顔で言いました。
「だまれ! おれは何度も何度も、使いを送ってやったぞ!」
「うそだ!」
「いいや、次々とお前に送りこんださ。
お前のところに、熱が行かなかったか?
鼻水が出て、せきが止まらなかっただろう?
それに、目まいはどうだ?
腹痛は、どうだ?
寒気は、どうだ?
はき気は、どうだ?
下痢(げり)は、どうだ?」
「・・・たしかに」
「使いに気づいて正しい生活をすれば、もっと長生きできたのに。おろかな男だ」
おしまい
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