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12月7日の世界の昔話
アルキメデス 金の冠の重さ
むかしむかし、アルキメデスという名前の天才数学者がいました。
彼の発見した法則や原理は、今の科学でも欠かすことの出来ない物となっています。
このお話しは、その天才数学者アルキメデスのお話しです。
ある時、シラクサの国王ヒエロンは金細工師に金の固まりを渡すと、それで金の冠をつくるようにと命じました。
やがて出来上がった冠はまばゆいばかりに光り輝いており、王さまは大満足です。
「金ばかりでつくられた、こんな素晴らしい冠を持つ者は、世界中のどこを探してもこのわしだけだろう」
ところが金細工師が金に銀の混ぜ物をして、王さまからあずかった金の一部を盗んだといううわさが広まったのです。
金の冠は黄金色に光り輝いており、とても混ぜ物をしてあるとは思えませんが、うわさがある以上、このまま放って置くわけにはいきません。
「うむ、ここはひとつ、アルキメデスに調べさせてみよう。彼はギリシャ一の学者であるから、このくらいの事は簡単に調べられるだろう」
こう考えた王さまは、さっそくアルキメデスを呼び出して命令しました。
「アルキメデスよ。お前もうわさを聞いているかもしれんが、この金の冠がまことに金だけでつくられた冠か、それとも銀の混ぜ物をした冠なのかを調べて欲しいのだ」
「かしこまりました。おまかせ下さい」
アルキメデスは答えたものの、これにはすっかりまいってしまいました。
「はて、どうすればいいのだろう? 冠をつぶして調べればすぐにわかるだろうが、まさか王さまの冠をつぶしてしまうわけにはいかないし」
それからアルキメデスは、ああでもない、こうでもないと、昼も夜も考え込んでしまって、食べ物も喉を通らないほどです。
そんなある日の事、アルキメデスは気ばらしにお風呂にでも行ってみようと思いつき、お風呂屋に出かけていってのんびりと湯につかっていました。
「ああ、良い気持ちだ。
心も体も、軽くなる。
・・・軽くなる。
・・・お湯につかると、軽くなる。
体がお湯の中で浮くという事は、お湯の中ではそれだけ体が軽くなるからだ。
体がお湯の中で軽くなるなら、金の冠だって軽くなるに違いない。
もし冠が金ばかりで出来ているのなら、同じ重さの金の固まりも同じだけ軽くなるはずだ。
もし冠が金ばかりで出来ていなければ、同じ重さの金の固まりと軽くなり方が違わなくてはならない。
すると冠と同じ重さの金の固まりが、どのくらい軽くなるかを調べてみればいいんだ。
エウレカ(わかったぞ)! エウレカ(わかったぞ)!」
アルキメデスは、お湯の中から飛びあがりました。
新しい発見に興奮して、まわりの物は何も目に入りません。
「早く帰って、実験だ!」
お風呂屋から飛び出したアルキメデスは家に向かって走り出しましたが、道を行く人たちはそんなアルキメデスを見てびっくりです。
なぜならアルキメデスは新しい発見の興奮のあまり、服を着るのも忘れてまっ裸で町の中を走っていたのです。
さて、裸のまま家に帰ったアルキメデスは、冠と同じ重さの純金の固まりと純銀の固まりをつくって、それぞれの重さを水中ではかり、王さまの冠の金がどれだけの量の銀にかえられたかまでも計算して、一代の面目をほどこしたと伝えられています。
当時、金は全ての金属の中で一番密度が高くて、同じ大きさの金と銀とでは金の方がずっと重いという事は、アルキメデスだけでなく多くの人も知っていました。
また、
『物体は水中では、これと同じ体積の水の重さ分だけ軽くなる』
と、言うのは、《アルキメデスの原理》として今でも使われているのです。
おしまい
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