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6月8日のイソップ童話
アリに刺された男とヘルメス
ある日、1せきの舟が、のっていたおおぜいの人とともに海にしずんでしまいました。
それを見ていた1人の男が、
「神さまのやりかたはまちがっている! あの船には、ばちあたりな人間が1人のっていただけなのに、その人をばっするために、おおぜいの罪のない人を死なせるなんて、まったくひどい話だ」
と、いいました。
ちょうどそこは、アリがたくさんいる場所でしたので、一ぴきのアリがこのうるさい男をちくりと刺しました。
「うっ! アリのくせに人間さまをかみやがって、こうしてくれる!」
すると男は、たった一ぴきのアリが刺しただけなのに、そこにいたアリを残らずひねりつぶしてしまいました。
そのとき、ヘルメス(→詳細)の神があらわれて、男を杖でたたいて、こう言いました。
「どうだ、これでもおまえは、おまえがアリをさばくのと同じように、神が人間をさばくのはけしからんというつもりか」
不幸があったときに、神をののしってはなりません。
それよりも、自分がなにか悪いことをしなかったかどうか、反省することが大切です。
おしまい