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6月8日の日本の昔話

みそさざいは鳥の大将

みそさざいは鳥の大将

 むかしむかし、まんまる山という山の中で、鳥たちが集まって、にぎやかに大えんかいしていました。
 そこで、烏たちはこんな話をしています。
「のう、みんな。鳥たちのなかで、いったいだれが大将かのう?」
「鳥の大将か? そりゃあやっぱり、タカさまでねえか」
「うん、タカさまが、いちばん強い」
「空を飛べばいちばんはやいし、ねらったえものはぜったいのがさない」
「そうだ、鳥の大将はタカさまだ」
 みんながうなずきあっていると、鳥のなかでいちばん小さなみそさざい(→スズメ目ミソサザイ科の鳥で、翼長は約5センチ)が、酒によったいきおいで、ついこんなことをいってしまったのです。
「鳥の大将はタカだって? とんでもない。大将はこのおれさまだい! タカが強いだって? からだがでっけえだけで、頭はカラッポさ」
 ほかの鳥たちのおどろいたのなんの。
「これこれ、そんなしつれいなことをいってはいかん」
「だってほんとうだもの。どうじゃ、タカ。おらとおめえとどっちがつええか勝負してみるか?」
 はじめは相手にしなかったタカも、みそさざいがあんまりしつこいので、だまっていられなくなりました。
「みそさざいよ、そこまでいうのなら、ひとつためしてみよう。勝負は山のイノシシ(→詳細)をやっつけることだ。イノシシをやっつけてこそ、鳥の大将といえる」
「いいとも、やってやろうじゃないか」
 ほかの鳥たちは、あきれていいました。
「タカさまも、みそさざいさんも、そんなばかなこと、おやめなさいよ」
 するとみそさざいは、
「おめえ、おらが負けると思って、やめろなんていうのか? おらあ、タカなんかに負けねえぞ!」
「よし! きまった。あした、三角山のてっぺんに、おてんとさまがのぼったらはじめることにしよう」
 さて、朝になって目がさめると、みそさざいは青くなりました。
「どうしよう。酒によったいきおいとはいえ、とんでもないことを言ってしまった」
 なんとかあやまろうと、タカのところへいったのですが、
「おや、みそさざい。早いじゃないか。さあ、きのうのやくそくを守ってもらおうか。ほれ、ちょうどイノシシがやってきた。おまえからいけ!」
 もう、あとにはひけません。
 みそさざいは死んだ気になって、イノシシめがけてとびかかりました。
 でも、イノシシはビクともしません。
 ぎゃくに、イノシシがみそさざいにとびかかってきたのです。
 みそさざいは逃げましたが、おいついてきたイノシシの鼻の穴の中にスッポリ。
 さあ、おどろいたのはイノシシです。
「く、苦しい〜っ!」
 イノシシは、あちらこちら走りまわり、とうとう木にぶつかって、
 ドシーン!
 目をまわしてしまいました。
 タカやほかの鳥たちが、みそさざいのようすを見にいくと、なんということでしょう。
 みそさざいが、のびたイノシシを前に、とくいそうにむねをはっているのです。
「どうです! さあ、こんどはタカさんのばんですよ」
「ようし、おまえがイノシシ一頭なら、おれは二頭やっつけてやる」
 タカはヒラリとまいあがると、二頭のイノシシにむかっていきました。
「鳥の大将は、このおれさまだ!」
 タカは、ならんで走る二頭のイノシシにまたがり、二頭を連れ去ろうとしました。
 そのとたん、二頭のイノシシが左右に分かれたからたいへんです。
 タカは、まっぷたつにひきさかれてしまいました。
 鳥たちはあっけにとられ、それからわっとかんせいをあげました。
「みそさざいの勝ちだ!」
「鳥の大将は、みそさざいだ!」
 それからです。
 烏のなかでいちばん小さなみそさざいが、鳥の大将といわれるようになったのは。

おしまい

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