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日本の感動話 第3話

節分の鬼
イラスト myi   ブログ sorairoiro

かくしキャラを探そう。
(キツネ、葉っぱウサギ)


正解は、お話しの最後にあります。

節分の鬼

 むかしむかし、ある山里に、一人暮らしのおじいさんがいました。
 この山里では今年も豊作で、秋祭りでにぎわっていましたが、誰もおじいさんをさそってくれる者はおりません。

節分の鬼

 おじいさんは祭りの踊りの輪にも入らず、遠くから見ているだけでした。
 おじいさんのおかみさんは病気で早くになくなって、一人息子も二年前に病気で死んでいました。

節分の鬼

 おじいさんは毎日、おかみさんと息子の小さなお墓に、お参りする事だけが楽しみでした。
「かかや、息子や、早くお迎えに来てけろや。極楽(ごくらく→天国)さ、連れてってけろや」
 そう言って、いつまでもいつまでも、お墓の前で手を合わせているのでした。

 やがてこの山里にも冬が来て、おじいさんの小さな家は、すっぽりと深い雪に埋もれてしまいました。

節分の鬼

 冬の間中、おじいさんはお墓参りにも出かけられず、じっと家の中に閉じこもっています。

節分の鬼

 正月が来ても、もちを買うお金もありません。
 ただ冬が過ぎるのを、待っているだけでした。

 ある晴れた日、さみしさに耐えられなくなって、おじいさんは雪に埋まりながら、おかみさんと息子に会いに出かけました。

節分の鬼

 お墓は、すっかり雪に埋まっています。

節分の鬼

 おじいさんは、そのお墓の雪を手で払いのけると。

節分の鬼

「さぶかったべえ。おらのこさえた甘酒だ。これ飲んで温まってけろ」
 おじいさんは甘酒を供えて、お墓の前で長い事、話しかけていました。

 帰る頃には、もう日も暮れていました。

節分の鬼

 暗い夜道を歩くおじいさんの耳に、子どもたちの声が聞こえてきます。
は〜、外! 福は〜、内!」
「鬼は〜、外! 福は〜、内!」
 おじいさんは足を止めて、辺りを見回しました。
 どの家にも明かりがともって、楽しそうな声がします。
「ほう、今夜は節分(せつぶん)じゃったか」
 おじいさんは、息子が元気だった頃の節分を思い出しました。

節分の鬼

 鬼の面をかぶったおじいさんに、息子が豆を投げつけます。
 息子に投げつけられた豆の痛さも、今では楽しい思い出です。

 おじいさんは家に帰ると、押し入れの中から古いつづらを出しました。

節分の鬼

「おお、あったぞ」

節分の鬼

「むかし、息子とまいた節分の豆じゃあ。ああそれに、これは息子がわしに作ってくれた鬼の面じゃ」
 思い出の面をつけたじいさんは、ある事を思いつきました。

節分の鬼

「おっかあも、可愛い息子も、もういねえ。ましてや、福の神なんざにゃ、とっくに見放されておる」
 こう思ったおじいさんは、鬼の面をかぶって豆をまき始めました。
「鬼は〜内、福は〜外。鬼は〜内、福は〜外」

節分の鬼

 おじいさんは、わざとアベコベに叫んで豆をまきました。
「鬼は〜内、福は〜外」

節分の鬼

 もう、まく豆がなくなって、ヘタヘタと座り込んでしまいました。
 その時、おじいさんの家に誰かがやって来ました。

節分の鬼

「おばんでーす。おばんです」
「誰だ? おらの家に、何か用だか?」
 おじいさんは、戸を開けてビックリ。
「わあーーっ!」

節分の鬼

 そこにいたのは、赤鬼と青鬼でした。
「いやー、どこさ行っても、『鬼は〜外、鬼は〜外』って、嫌われてばかりでのう。
 それなのに、お前の家では、『鬼は〜内』って、呼んでくれたでな」
 おじいさんは震えながら、やっとの事で言いました。
「す、すると、おめえさんたちは節分の鬼?」

節分の鬼

「んだ、んだ。こんなうれしい事はねえ。まんずあたらしてけろ」
と、ズカズカと家に入り込んで来ました。
「ま、待ってろや。今、たきぎを持って来るだに」
 この家に客が来たなんて、何年ぶりの事でしょう。

節分の鬼

 たとえ赤鬼と青鬼でも、おじいさんにはうれしい客人でした。
 赤鬼と青鬼とおじいさんが、いろりにあたっていると、またまた人、いえ、鬼が訪ねて来ました。

節分の鬼

「おばんでーす。おばんです」
「『鬼は〜内』ってよばった家は、ここだかの?」
「おーっ、ここだ、ここだ」
「さむさむ。まずは、あたらしてもらうべえ」
 ぞろぞろ、ぞろぞろ、それからも大勢の鬼たちが入って来ました。

節分の鬼

 何と節分の豆に追われた鬼がみんな、おじいさんの家に集まって来たのです。
「何にもないけんど、うんと温まってけろや」
「うん、あったけえ、あったけえ」
 おじいさんは、いろりにまきをドンドンくべました。
 十分に温まった鬼たちは、おじいさんに言いました。
「何かお礼をしたいが、欲しい物はないか?」
「いやいや、何もいらねえだ。あんたらに喜んでもらえただけで、おら、うれしいだあ」
「それじゃあ、おらたちの気がすまねえ。どうか、望みをいうてくれ」
「そうかい。じゃあ、温かい甘酒でもあれば、みんなで飲めるがのう」

節分の鬼

「おお、引き受けたぞ」
「待ってろや」

節分の鬼

 鬼たちは、あっという間に出て行ってしまいましたが、
「待たせたのう」

節分の鬼

 しばらくすると、甘酒やら、ごちそうやら、そのうえお金まで山ほどかかえて、鬼たちが帰って来ました。
 たちまち、大宴会の始まりです。

節分の鬼

「ほれ、じいさん。いっペえ飲んでくれや」
 おじいさんも、すっかりご機嫌です。
 こんな楽しい夜は、おかみさんや息子をなくして以来、始めてです。
 鬼たちとおじいさんは、一緒になって大声で歌いました。

節分の鬼

♪やんれ、ほんれ、今夜はほんに節分か。
♪はずれ者にも、福がある。
♪やんれ、やんれさ。
♪はずれ者にも、春が来る。

 大宴会は盛り上がって、歌えや踊れやの大騒ぎ。
 おじいさんも鬼の面をつけて、踊り出しました。

♪やんれ、やれ、今夜は節分。
♪鬼は〜内。
♪こいつは春から、鬼は内〜っ。

 鬼たちは、おじいさんのおかげで、楽しい節分を過ごす事が出来ました。
 朝になると鬼たちは、

節分の鬼

 また来年も来るからと上機嫌で帰って行きました。

 おじいさんは鬼たちが置いていったお金で、おかみさんと息子のお墓を立派な物に直すと、手を合わせながら言いました。

節分の鬼

「おら、もう少し長生きする事にしただ。
 来年の節分にも、鬼たちを呼ばねばならねえでなあ。
 鬼たちに、そう約束しただでなあ」

節分の鬼

 おじいさんはそう言うと、晴れ晴れした顔で家に帰って行きました。

おしまい

隠しキャラの正解
(キツネ、葉っぱウサギ)
ネコがネズミをおいかけるわけ

※ この福娘童話集の「節分の鬼」は、新作狂言の「鬼は内」として、和泉流狂言野村万蔵家にて年四回講演されています。

新作狂言「鬼は内」.txt
新作狂言「鬼は内」のパンフレット.pdf
株式会社TMDネットワーク 和泉流狂言野村万蔵家

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