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4月20日の日本の昔話
  
  
  
  病気のお見舞い
 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
   あるとき、庄屋(しょうや→詳細)さんがかぜをひいてしまいました。
  「庄屋さんは口うるさいから、見舞い(みまい)にいっておかんと、あとでなにをいわれるかわからん」
   村の人たちは、つぎつぎに見舞いにでかけましたが、つむじまがり(→ひねくれもの)のきっちょむさんは、みんなが見舞いをおえたあとに、ひとりでノコノコとでかけていきました。
  「庄屋さん、おかげんはいかがでしょうか?」
  「村のものが、みんなはやく見舞いにきてくれたというのに、おまえはいったい、いまごろまでなにをしておった。なにをさておいても、見舞いにかけつけるのが、れいぎというものではないか」
   庄屋さんは、プリプリと文句を言いました。
  「いえ、じつは、庄屋さんにもしものことがあってはと、お医者さんをよびにいったのです。あいにく、お医者さんはでかけてましたんで、またかえりに、よってたのんでいきます」
   すると、庄屋さんはたちまちきげんをなおして、
  「そうか、そうか。さすがはきっちょむさんじゃ。よく気がきく。しかったりして、わしがわるかった。お医者さんには、もうだいじょぶだからといってくれまいか」
  と、きっちょむさんを、酒やごちそうでもてなしました。
   ところが、いくにちかたつと、庄屋さんのかぜがぶりかえしたというので、村のみんながまた、ぞろぞろと見舞いにでかけました。
   きっちょむさんが、いちばんあとから見舞いにゆくと、庄屋さんはいきもたえだえで、
  「ああ、よくきてくれた。こんども気をきかして、お医者さまをよんできてくれたか?」
  と、きっちょむさんの手をとりました。
   ところが、
  「いやいや。どうも、こんどばかりはたすかりそうもないとおもって、お寺のお坊さんをよびにいったり、お葬式(そうしき)の棺(かん)おけやら、おつやのあとに出す、料理の材料のてはいをしてきまして。それで、すっかりおそくなりました」
   きっちょむさんの、あまりのてまわしのよさに、庄屋さんはおこったのなんの。
  「バカ者! わしは、まだまだ死なんぞ! 気をきかすにも、ほどがある!」
   カンカンにおこったいきおいで、庄屋さんの病気はなおってしまいました。
おしまい