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5月4日の日本の昔話
田植え地蔵
むかしむかし、あるところに、はたらき者のおじいさんとおばあさんがすんでいました。
二人は毎日なかよく、山の田んぼに出かけます。
途中の道ばたに、小さなおじぞう(→詳細)さまありました。
おじいさんとおばあさんは、毎日そのおじぞうさまに手を合わせます。
「今日も元気で働けますように」
そう言って、熱心にお参りしました。
春が過ぎて、田うえの時期が来ました。
「さあさあ、田うえじゃ、田うえじゃ」
けれども、曲がった腰をさすりながらでは、なかなか田うえははかどりません。
そこへ、クリクリ頭の元気な男の子がやってきました。
「おいらが手伝ってやろうか?」
「それはありがたい。それじゃあ、たのもうか」
男の子が田うえを始めると、そのしごとの早いこと早いこと。
たちまち田うえは終わってしまいました。
おじいさんもおばあさんも大喜びです。
「田うえが終わったから、おいらは帰る」
男の子は大急ぎで山を下りていきました。
男の子に田うえのお礼をしようと、おじいさんとおばあさんは後を追いかけましたが、いつものおじぞうさまのところで、男の子を見失ってしまいました。
「あの、おじぞうさま、このへんに男の子は通らなかったかのう」
そう言っておじぞうさまの足元をふと見てみると、田んぼの泥がベッタリとついています。
顔もよく見てみると、なんと、さっきの男の子にそっくりではありませんか
「おやおや、わしらの田うえを手伝ってくれたのは、おじぞうさまでしたか、ありがたい、ありがたい」
ふたりはそれからも、毎日毎日おじぞうさまに手を合わせました。
おしまい