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10月3日の小話

しゃれこうべをつった男

しゃれこうべをつった男

 むかし、ある長屋(ながや→むかしの集合住宅 →詳細)に、ひとりものの男がいました。
 ある日、男がたいくつしのぎに、さかなつりに出かけると、この日にかぎって、ちっともつれません。
 日もくれてきたので、そろそろ帰ろうとすると、きゅうに手ごたえが。
「おおっ、・・・よし、大物だぞ!」
 男がよろこんで、さおを引き上げると、なんと、つれたのはしゃれこうべ(頭がい骨)でした。
「ひぇー、えんぎでもないものをつってしまった」
 男は、よほど、そのまますてようかとおもいましたが、
「これも、何かの縁というものだ。長屋に持って帰って、せんこうでもあげてやろう」
と、しゃれこうべを持って帰りました。
 男が、せんこうや花をあげて、おがんでやると、そのばんおそく、
「こんばんは」
 うつくしい女の人が、そっとたずねてきました。
「わたしは、あなたにとむらっていただいた、しゃれこうべです。おかげで、じょうぶつすることができました」
「えっ。それでは、あの、しゃれこうべのゆうれい(→詳細)?」
 男はおどろきましたが、それにしても美人です。
 ポーッとなっていると、
「おんがえしに、あなたのお嫁さんにしていただけませんか?」
 ゆうれいがたのみました。
 この話を、となりの男がききつけて、かべのあなからのぞきました。
 この男も、ひとりものです。
「あのやろう、うまいことやりやがったな。しゃれこうべをつって、あんなべっぴんの嫁さんといっしょになれたなんて、まったく、うんがよすぎる。よし、おれもうらやましがっていないで、しゃれこうべをつりにいくぞ」
 あくる日、つりざおを持って、出かけました。
 川べりで、男がでたらめにつりざおを振り回していると、
「おっ! きたきた、きたぞ!」
 めでたく、しゃれこうべをつり上げました。
「どんな嫁さんがきてくれるか、楽しみだ」
 男はしゃれこうべを長屋に持ち帰ると、ていねいにおせんこうをあげました。
「さて、もう、きてもいいころだなあ」
 男がまちにまっていると、ドンドン、ドンドンドンと、はげしく戸をたたくものがありました。
「きたきた。しかし、ずいぶんらんぼうなたたきかただな。家がぶっこわれちまうよ。はいはい、いまあけますが、どなたです?」
「しゃれこうべのぬしだ!」
 ふとい、男の声です。
「えっ、おかしいなあ。女じゃないなんて。いったい、どんなやつがきたんだろう」
 男が、ガラッと戸をあけると、ひげづらの大男がぬうっとつっ立っていて、
「おれは、大どろぼう『石川五右衛門(いしかわごえもん)』のゆうれいだ。ひとこと、れいがいいたくてきた」
 こんな男にあがりこまれたら、たいへんです。
 男はあわてて戸をしめました。
「おれいはけっこうです。はやく、地獄のかまへお帰りのほど」

おしまい

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