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1月27日の日本民話
カッパと殿さま
熊本県の民話
むかしむかし、カッパは遠い中国大陸の奥から、日本にやってきたといわれています。
日本へやってきたカッパの大将は、九千坊(くぜんぼう)というカッパで、九千匹の子分(こぶん)をひきつれて海をわたり、九州の球磨川(くまがわ→熊本県南部の川で、長さ115キロメートル。富士川・最上川と共に日本三急流の一つ)にたどりついたのです。
ある時、殿さまがかわいがっていたお付きの者が、カッパに川の中へひきずりこまれて死んでしまいました。
殿さまは、はげしく怒って、
「カッパを一匹残らずつかまえて、みな殺しにしてやれ! 焼き殺そうが、煮てカッパ汁にしようが、さおにつるして干物にしようがかまわん!」
殿さまの言葉をきいたカッパたちは、ふるえあがりました。
殿さまはカッパがほかの地へ逃げないように、お坊さんにカッパ封じのお経を読ませて、川に毒の草を流させ、さらにカッパがきらいだというサルを集めて、逃げまどうカッパをつかまえさせるという、カッパ退治を計画したのです。
これを知ったカッパの親分は、近くのお寺へとんでいって、和尚(おしょう)さんにとりすがりました。
「これからは、ぜったいに人には悪さをしませんから許してほしいと、殿さまにいってください」
カッパの親分は、和尚さんに何度も何度も頭を下げました。
これには和尚さんも心をうたれて、この事を殿さまにつたえました。
すると殿さまも、
「・・・そうか。それでは、今度だけはゆるそう」
と、カッパ退治は中止になったのです。
その後も、この地ではカッパのイタズラが何度かありましたが、
カッパの親分は、
「イタズラをしたのは、きっとよその地から来たカッパでしょう。この地に住むカッパは、あれから一度もイタズラはしていません」
と、いったという事です。
おしまい