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2月12日の日本民話
長者の心を変えた仁王さま
富山県の民話
むかしむかし、田の又(たのまた)というところに板東長者(ばんどうちょうじゃ)と呼ばれるお金持ちが住んでいました。
でもいつのころからか家運が傾き始めたので、家を立て直そうと思った長者は使用人たちを牛馬(ぎゅうば)のようにこき使いました。
そのため使用人は一人減り、二人減りと、とうとう誰も寄りつかなくなってしまいました。
そんなある日の事、筋骨(きんこつ)たくましい大男がやってきて、長者に、
「働かせてください」
と、たのむので、ためしに使ってみると、朝早くから夜遅くまでとてもまじめに働きました。
「いつもよく働くな。さて、そろそろお前の給金(きゅうきん→給料)を決めようと思うが、何か望みはないか?」
と、感心した長者が大男にいうと、
「取り入れが終わったら、イネを一かつぎいただくだけで結構(けっこう)です」
「おお、そんなことはおやすいごようさ。約束しよう」
さて、その年の秋は、大男のおかげで大豊作(だいほうさく)です。
大男は約束通りイネをもらうことになり、かりとったイネを全部ひとまとめにしばると、かるがると背負っていきます。
「おっ、おい、まってくれ!」
長者が後を追いかけると、大男は法福寺(ほうふくじ)の仁王門(におうもん)の前でパッと消えました。
長者が仁王門にやってくると、なんと門前に泥まみれのワラジがかけてありました。
そのワラジは、長者が大男にあたえたワラジです。
「も、もしや」
長者がそばにある仁王像の足元を見てみると、その仁王像の足も泥だらけでした。
「そうか、そうだったのか・・・」
長者は、欲ぶかい心をいましめるために仁王さまが姿を変えて現れたことに気づき、その日から心をいれかえたので、だんだん家運を盛り返したという事です。
おしまい