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2月18日の日本民話
炭やき長者
山形県の民話
むかしむかし、ある村に、大金持ちの長者(ちょうじゃ)が住んでいました。
ところがこの長者はひどいけちんぼうで、人のためにお金を出したことがありません。
そのくせただとわかると、何でももらっていきます。
そして長者は夜になると、土蔵(どぞう→そうこ)の中で大判小判(おおばんこばん→お金)のつまったはこを開け、一枚一枚数えるのが大好きでした。
ところがある日、いつものようにお金を数えていた長者が首をかしげました。
「おかしいぞ」
一枚も使ったことがないのに、数がたりません。
次の日になると、またお金がへっています。
「もしかして、ドロボウかもしれない」
そこで長者は、土蔵を見はることにしました。
ジッと待っていますが、だれもやってきません。
ところが、ま夜中になったころ、土蔵の中からヒソヒソと話す声が聞こえてきます。
「おや? 土蔵にはだれもいないはずだが」
長者は、土蔵の中をそっとのぞいてビックリ。
お金のはこの中から、大判小判が次々と飛び出して、
「おら、もうこの家にいるのはいやだ。ここのだんなは、人にお金をめぐむということを知らない」
「そうだ、そうだ。ためるばかりで使うことをしない。こんな家、はやく逃げだしてしまおう」
と、話し合っているではありませんか。
長者はあわてて、土蔵の中に飛び込みました。
「待て! お前たちはわしのものだ。どこへも行かさんぞ!」
すると大判小判はいっせいに動きだし、ジャラジャラと外へ出ていきました。
長者はあわてて追いかけましたが、大判小判はあっというまに姿を消したのです。
さて、山のおくまでにげてきた大判小判は、
「逃げてきたのはいいが、どこへ落ち着こうか?」
と、立ち止まりました。
すると、小判が言いました。
「この山に、炭やきの藤太(とうた)という男がいる。たいへんな働き者で、お金がなくてもこまった人のめんどうをよくみるという話だ」
「そういえばこの間も、いっしょうけんめい炭をやいてためたお金を、病気でねているおじいさんにそっくりあげたそうな」
と、大判も言いました。
「よし、きまった。みんなで藤太のところへ行こう」
そんな事とは知らない藤太が、つぎの朝、起きてみるとどうでしょう。
炭小屋の前に、大判小判が山のようにつみかさなっているではありませんか。
藤太は大喜びで大判小判をひろい集めると、さっそく山をおりて、こまっている人たちみんなに分けてあげました。
それからのこったお金で家をたて、お嫁さんをもらいました。
気前のいい藤太は町で評判になり、藤太の売る炭が飛ぶように売れました。
やがて藤太は村一番のお金持ちになり、みんなから炭やき長者とよばれるようになったという事です。
おしまい