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7月4日の日本民話

カワウソのしかえし

カワウソのしかえし
宮城県の民話

 むかしむかし、宮城県の網地島(あじしま)には、たくさんのカワウソがすんでいました。
 カワウソはりこうな動物で、年を取ると化ける事が出来るといわれています。
 島にはカワウソをまつったカワウソ神社があり、神社の近くには、けちで有名な権三(ごんぞう)という男がいました。
 権三は、
「どうせ、神さまが食うわけではねえ」
と、いって、島の人たちが神社にそなえていくアズキダンゴをぬすんで食べていました。
 さて、ある年の夜の事です。
 この日は大潮(おおしお)にあたり、潮がひくと島の人たちは岩場におりて、岩についている海藻(かいそう)をとるのでした。
 神社のアズキダンゴをおなかいっぱい食べた権三が、ひと寝入りして潮がひくのをまっていると、家の前で、
「おーい、権三。磯(いそ)へいかねえのか?」
と、声をかける者がいました。
 権三は、ほかの人たちに先をこされまいと、いそいで外へ出ていきました。
 すると目の前に、大きな黒いかげが立っていたのです。
 権三はビックリして家の中へ逃げこもうとしましたが、強い力で後ろからだきつかれてしまい、動くことが出来ません。
「なっ、なんじゃこりゃ! だ、だれじゃ?」
 権三があわてて敷居(しきい)にしがみつくと、相手は力いっぱい権三の体をひっぱりあげようとします。
 権三も力をこめて必死に敷居にしがみついていると、相手はあきらめたのか、そのまま家から出て行ってしまいました。
 気味が悪くなった権三は、家の戸じまりをすると、その夜は磯(いそ)には行かずにふとんをかぶって横になってしまいました。
「ああ、おっかねえ。まっ黒で、何も見えんかったが力は強かった。いや、プーンと、生ぐせえにおいがしたような気もするが」
 そんなことを思っていると、家の裏のウマ小屋で、ウマがヒヒーンと鳴きました。
「あいつ、今度はウマのところへいったな。ウマをどうするつもりじゃ?」
 心配になりましたが、おそろしいので見に行く事はできません。
 翌朝早くウマ小屋へいってみると、ウマの姿が消えていました。
 ウマ小屋からウマの足あとがついているのでたどっていくと、カワウソ神社の裏の海に、権三のウマが死んで浮いていました。
 ウマは権三の身代わりに、つれていかれたのかもしれません。
 その後、磯(いそ)で海藻(かいそう)をとっているときなど、権三が顔をあげると、向こうの岩かげから自分そっくりの顔をだして、権三を見る者がいました。
 何度も何度も同じことをするので、権三はとうとう頭がおかしくなってしまったということです。
 岩のかげから何度も自分と同じ顔を見せるのは、カワウソがよくやる術だそうで、権三が神社にそなえたダンゴをぬすんだので、カワウソにしかえしをされたという事です。

おしまい

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