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8月28日の日本民話

子どもの好きな地蔵さん

子どもの好きな地蔵さん
福島県の民話

 むかしむかし、ある村の道ばたの草むらに、小さな地蔵(じぞう)さんがころがっていました。
 ある日のことです。
 村の子どもたちが地蔵さんをゴロゴロころがしたり、ウマにしてまたがったりして遊んでいると、通りかかったお百姓(ひゃくしょう)のおばあさんが、
「これこれ。地蔵さんをおもちゃにしておると、ばちがあたるぞ。なんとも、もったいない。こんな事をするなら、このばばがもらっていくよ」
 そういって背負っていたカゴの中に地蔵さんを入れて、村はずれの見はらしのいい丘の上に持っていきました。
 そして草花をそなえて、まつってあげたのです。
 すると、どうしたことでしょう。
 地蔵さんをおもちゃにして遊んでいた子どもたちが、次々と熱を出してしまったのです。
 それほど苦しむようすはありませんが、何日も何日も、熱はなかなかなおりません。
「どうしたんだ? 元気な子だったんだがな」
 家の人たちが心配していると、一人の子どもの親の夢に地蔵さんが現れていいました。
「わしは、子どもたちと遊びたかったのに。丘の上などにまつられて、おもしろくもない。はやく、子どもたちと遊びたい」
 子どもの親たちはビックリして、さっそく丘の上から地蔵さんを村へつれてきました。
 そして病気にかかっている子どもの家を地蔵さんをつれて一軒一軒まわると、子どもたちはすっかり元気をとりもどしたのです。
 子どもの親たちはたいへん喜んで、地蔵さんを「子育て地蔵」と名づけ、もともと地蔵さんがころがっていた道のかたわらに、小さなお堂をたててまつることにしました。
 この子育て地蔵さんは子どもたちと遊ぶのが大好きで、鬼ごっこや、かくれんぼなどをするとき、子どもたちはお堂から地蔵さんを出してきて一緒に遊ぶのでした。
 地蔵さんと一緒に遊ぶ子はますます元気になり、けがや病気をしないので、村の親たちは大喜びです。
 やがてこの子育て地蔵さんの話は、近くの村々へもひろがっていきました。
 子どもが病気でこまっている人たちは地蔵さんをかりにきて、しばらくその子と一緒にしておきます。
 すると子どもは元気になり、お礼として地蔵さんにかわいらしい着物を着せてやるので、地蔵さんの着物はふえるばかりでした。
 するとますます、地蔵さんをかりにくる人たちもふえていきます。
 その後、毎月二十八日には村のお堂に集まって、にぎやかなお祭りをするようになったという事です。

おしまい

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