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11月4日の日本民話
カッパのくれた宝物
秋田県の民話
むかしむかし、あるところに、とてもなまけ者の兄さんがいました。
毎日仕事もしないで遊んでばかりいるので、怒ったお父さんがお金とやせたウマをわたして、
「これをやるから、さっさと家を出ていけ!」
と、兄さんを家から追い出してしまいました。
兄さんは仕方なくウマに乗って歩いていたら、子どもたちが一羽のトンビをつかまえて、たたいたり、けったりしていじめていました。
それを見た兄さんは、トンビがかわいそうになり、
「わしに、トンビをゆずってくれ」
と、言って、お父さんからもらったお金を全部、子どもたちにあげました。
兄さんはトンビをだくと、またウマに乗って歩き始めました。
やがて大きな川に出ましたが、兄さんはウマに乗ったまま、ズンズンと川のなかへ進んでいきます。
ところが川の中ほどまできた時、きゅうにウマがあばれだしたのです。
兄さんはあわててウマの首にしがみつき、なんとかウマを岸にあげました。
そしてふとウマのしっぽを見てみると、何とウマのしっぽにカッパがつかまっているのです。
兄さんはウマからとびおりると、そのカッパをつかまえていいました。
「どうして、ウマのしっぽなんかにつかまるんだ。もう少しで川へ落ちるところだったじゃないか」
するとカッパは、手を合わせてあやまります。
「おら、ウマのおしりが好きだから、つい。でも、もう二度としないから、かんべんしてくれ」
「いや、かんべんできない。頭のさらをたたきわってやる」
「と、とんでもない。おらの宝物を持ってくるから、たすけてくれ」
「よし、それなら、たすけてやってもよいぞ」
「すまねえ。すぐに川へもどってとってくるから、おらをはなしてくれ」
兄さんがカッパをつかまえた手をはなしてやると、カッパは大喜びで川まで走っていきました。
兄さんは、その後ろから言いました。
「うそついたら、しょうちしないぞ。このトンビはな、火の中だって水の中だって入っていって、お前の頭のさらをわることができるんだぞ」
するとカッパは、ふりかえって言いました。
「カッパは約束を守る。うそなんか言わねえ。すぐにとってくる」
兄さんがしばらく川の中を見ていたら、カッパが顔を出して、
「お待たせ。宝物はこれです」
と、古い木づちをわたしました。
「何だこりゃ?」
兄さんはその木づちで、そばにあった石ころをたたいてみました。
すると木づちから、マメつぶが一つころがりでました。
「マメつぶ一つしか出ない木づちなんて、わしをバカにするつもりか!」
「と、とんでもない! だまってたたけばマメつぶしか出ないが、ほしい物の名前を言ってたたけば、何だって出るんですよ」
そう言うと、カッパは川のそこへもぐってしまいました。
「なんでも出てくるなんて、本当かな?」
兄さんは、おなかが空いていたので、
「よし、ぼたもち出ろ」
と、言って、木づちをふりました。
すると本当に、目の前にぼたもちが現れたのです。
「なるほど。こいつはすごいや!」
兄さんはぼたもちを食べると、宝物の木づちをふところに入れて、ウマに乗って家へもどっていきました。
「なにしに、帰ってきた!」
と、怒るお父さんの目の前で、兄さんは木づちでお金や米を出してみせました。
するとお父さんは、とても喜んで、
「もう、どこへも行くな」
と、言ったのです。
カッパにもらった木づちのおかげで、お父さんと兄さんは、いつまでもなかよくくらしたという事です。
おしまい