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11月10日の日本民話
もちの白鳥
富山県の民話
むかしむかし、ある村に、たいへんな大金持ちの長者(ちょうじゃ)が住んでいました。
なにしろ、丘の上には米蔵(こめぐら)が七つに、酒蔵が七つ、そして金銀財宝がびっしりとつまった宝の蔵が七つもあって、その真ん中にお城のような屋敷があるのです。
でも、この長者は大変ひどい人で、毎日ウマに乗って召し使いたちの仕事ぶりを見て回るのですが、仕事の遅い者がいると、女であろうが年寄りであろうがムチでピシピシと打ちのめすのでした。
そんな長者でも、一人娘は大変にかわいがっています。
さて、娘が年ごろになり、よろず山の長者の家に嫁入りすることになりました。
喜んだ長者は、目もくらむばかりの婚礼(こんれい)の品じなをととのえました。
今日は、いよいよ嫁入りの日です。
婚礼衣装を七つの車に、お祝いの酒は八つの車に、ごちそうを九つの車にと、それぞれ山盛りにつんで運ばせました。
たいへんなぜいたくを一人娘にさせたのですが、そのうちに、
「娘に、土をふませるのはかわいそうだ」
と、百の臼(うす)でもちをつかせると鏡(かがみ)もちをつくり、むこ殿の家までの道すじにぎっしり並べさせたのです。
「よし、これで大丈夫。娘にはもちの上を歩かせよう。そうすれば、娘は土をふまなくてすむからな」
やがて準備の出来た娘が、まっ白なもちをふみながらむこ殿の家に向かいましたが、不思議な事に、娘が歩いたあとから鏡餅が白い鳥になって、パタパタと舞い上がっていくのです。
十羽、百羽、干羽と、すさまじい羽音を立てて白鳥は空のかなたに舞い立っていきました。
それからのち、長者は大変な貧乏になったという事です。
おしまい