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12月29日の日本民話
竜とニワトリ
沖縄県の民話
むかしむかし、海と山にはさまれた小さな村がありました。
人びとは山の木を切ってまきをつくり、船で遠く那覇(なは)の町まで運びこんで、それを売ったお金でくらしていました。
この村には、貧乏だけど名医とのうわさの高い、お医者さんがおりました。
ある日のタぐれ、お医者さんのところへ金持ちの娘が一人でたずねてきました。
お医者さんは、一目で娘が何かの化け物であることを見破りましたが、だまって、その痛いとうったえるところをみてあげました。
「どれどれ。・・・これは!」
なんと化け物の耳の中で、ムカデが一匹、あばれているのです。
「これは大変だ。だがその前に、あんたの正体を現しなさい!」
娘はコクリとうなずいたかと思うと、口から白い霧(きり)をふき出して、一匹の大青竜(だいせいりゅう)になりました。
そして目に涙をいっぱいためて、お医者さんを見つめています。
「おお、よしよし。今に楽にしてあげよう」
お医者さんはそういいながら、竜の耳の中にニワトリを入れてやりました。
さあ、それから青竜の耳の中で、ムカデとニワトリのたたかいがはじまりました。
ムカデとニワトリは竜の耳の中で大暴れしましたが、竜はジッとガマンしました。
それからまもなく、竜の耳からニワトリがムカデをくわえて出てきました。
「よかった、よかった。これで大丈夫だ」
すっかり元気を取りもどした竜は、お医者さんに竜胆(りゅうたん→リンドウの根を乾燥した胃薬)をさし出して、ニワトリには大きな頭を何度も下げて、天にのぼっていったそうです。
それからあと、竜はどんなに腹をたてて天に黒雲を呼び、地に大雨をふらせ、海に竜巻きを起こすことがあっても、そこにニワトリの姿を見つけると、ニワトリにケガをさせてはいけないと、すぐにおとなしくなったという事です。
おしまい