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6月23日の世界の昔話
  
  
  
  大きな家と小さな家
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 むかしむかし、神さまは旅の途中(とちゅう)で、二けんの家を見つけました。
   大きくて立派(りっぱ)な家と、小さくて古い家です。
   神さまは初めに、大きくてりっぱな方の家のドアをたたき、
  「どうか、一晩とめてください」
  と、たのみました。
   その家の主人は、ボロボロの服を着た旅人が、まさか神さまだとは思わずに、すぐにこう言いました。
  「うちは、どの部屋もいっぱいでね。ほかへ行ってください」
   次に神さまは、となりの小さくて古い家の主人に同じ事をたのみました。
   すると今度の主人と、そのおかみさんは、
  「どうぞ、中へ入ってお休みになって下さい」
  と、言って、そまつだけれどこころのこもった食事を出してくれたのです。
   そしてその夜は、
  「長旅でお疲れでしょう。わたしたちのベッドで寝てください」
  と、言って、自分たちは床に寝ました。
   次の朝、神さまが言いました。
  「もし、ねがいごとが三つかなうとしたら、何をねがいますか?」
  「一つは、わたしと妻が二人で天国へいけること。二つは、それまでずっと元気ではたらけること。それだけです」
  「では、三つ目の願いとして、この家を新しく大きくしてあげましょう」
   神さまは、三つの願いをかなえてあげました。
   それを知った大きな家の主人は急いでウマに乗り、神さまを追いかけました。
   そして、言ったのです。
  「わたしだって、ほんとうはあなたをとめるつもりだったんだ。だからわたしにも、願い事をかなえてくれてもいいはず。さあ、願いをかなえてください」
  と、むりに神さまにお願いのやくそくをしてもらい、男はいっしょうけんめい願い事を考えました。
   ところが、ウマがあんまりはねるので、イライラしてさけびました。
  「せっかくいい願いを思いつきそうだったのに!! このばかウマめ!! 首でも取れてしまうがいい」
   するとウマの首が、本当にポトンと落ちてしまったのです。
   一つ目の願いが、かないました。
   ウマが死んでしまったので、男はウマのくらを背負って歩かなくてはなりません。
   そのうちに、だんだんはらが立ってきました。
  「今ごろ、かみさんは家でのんびりしているに違いない。ちぇっ、あいつこそ、このおもいくらにずっとひっついてりゃいいんだ」
   すると男の背中から、くらが飛んでいきました。
   二つ目の願いも、かなえられたのです。
   男が家に帰ると、おかみさんはウマのくらに乗ったまま、おりられずにいました。
   男は最後の願いとして、世界中のお金が欲しいと思いましたが、おかみさんに、
  「今すぐ、このくらからおろしておくれよ。はやく!!」
  と、どなられて、しぶしぶくらからおりられるように願いました。
   三つの願いは、それで終わりになりました。
おしまい