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7月8日の世界の昔話
  
  
  
  白バラちゃんと赤バラちゃん
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 むかしむかし、ある森に、白バラちゃんと赤バラちゃんという、仲の良い姉妹が住んでいました。
   ふたりはいつも、
  「わたしたち、ずっといっしょにいましょうね」
  と、言っています。
   ある雪のひどい晩、さむさにこごえたクマが、二人に助けを求めました。
   ふたりはそのクマを、あたたかい部屋にとめてあげました。
   それから毎晩、クマは遊びに来るようになりました。
   すっかり仲良しになったある日のこと、クマはお別れを言いに来ました。
  「春になると、地下から悪い小人がぼくの宝物をぬすみに来るんだ。見張らなきゃいけないから、ここにはもうこれないんだ」
  「・・・そんな」
   さびしい気持ちで、二人はたきぎ拾いに出かけました。
   すると、たおれた木の下じきになって、小人がバタバタ手足を動かしていました。
   見ると、長いひげが枝にからまっています。
   白バラちゃんはしんせつに、からまった長いひげをはさみで切ってあげました。
   ところが、
  「よくも、自慢(じまん)のひげを切ったな!」
   小人は助けられたのにお礼も言わず、木の根の間から金貨のつまったふくろを取り出すと、さっさと行ってしまいました。
   それから少したったある日、二人は川でひげを魚にくわえられている小人を見ました。
   よく見ると、この前のこびとです。
   今度もはさみでひげを切って助けてあげたのに、小人は、
  「また、大事なひげを切りやがって!」
  と、どなりながら真珠(しんじゅ)の入ったふくろをかついで岩のかげに消えました。
   それからもまなく、二人はワシにさらわれそうになっている小人を助けてやりました。
   小人はまたお礼も言わず、宝石のつまった袋をかかえて。
  「おれの宝石を、ジロジロ見るな!」
  と、いいました。
   そのときです。
  「それは、ぼくの宝石だ!」
   クマがあらわれて、小人をやっつけてしまいました。
   するとクマの毛皮がハラリとぬげて、クマは美しい王子さまになったのです。
  「悪い小人を見つけてくれてありがとう。実はあの小人に魔法をかけられて、クマの姿にされていたんだ。小人のひげは小人の魔法のみなもと、小人のひげを切ってくれたおかげで、小人をやっつけることができました。白バラちゃん、ぼくと結婚してください。そして赤バラちゃんが、ぼくの弟と結婚してくれたら、ずっとみんなでいっしょにいられるよ」
  と、言うわけで、白バラちゃんと赤バラちゃんは、いつも二人が言っていたように、ずっと仲良くいっしょにくらしました。
おしまい