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世界のわらい話 第35話
バカなオオカミ
スペインの昔話 → スペインの国情報
むかしむかし、あるところに、あまりかしこくないオオカミが住んでいました。
ある朝、オオカミが大きなしっぽをふってみると、ビュンビュンと、すてきな音がします。
「おっ、きょうはなにかいいことがありそうだぞ。だって、しっぽがこんなによくなってるもんな。きっと、うまいあさめしがみつかるだろう」
オオカミはニコニコしながら、朝ごはんをさがしにでかけました。
しばらくいくと、おいしそうな肉が一切れ、道におちていました。
「よし、さっそくあったぞ! ・・・でも、こんなちっぽけな肉じゃ、いやだな。すぐに、もっとうまいごちそうがみつかるさ」
オオカミは一切れの小さな肉切れなんか、ひろおうともしませんでした。
やがてむこうから、お母さんウマが、かわいい子ウマをつれてやってきました。
「よしよし、あれだ。あの子ウマの肉は、やわらかくてうまそうだぞ」
オオカミは二匹のウマの前に立ちはだかると、こういいました。
「お母さんや。わるいが、おまえさんの子ウマをあさめしとしてたべるぜ」
お母さんウマは、目になみだをためてたのみました。
「どうぞ、みのがしてください。この子はわたしのだいじな、だいじな一人息子なんですから」
「ダメダメ、おれはもう、たべたくてたまらないんだ」
お母さんウマは、ちょっと考えていましたが、すぐにあきらめたようにいいました。
「・・・運がわるかったと思って、あきらめます。でも、子どもをたべるまえに、わたしの後ろ足にささっているトゲをぬいてくれませんか。あるくたびに、いたくていたくて、たまらないのです」
「ああ、いいよ。ぬいてあげよう」
オオカミは、お母さんウマのうしろにいって、からだをかがめました。
と、そのとたんに、お母さんウマは後ろ足をあげて、思いきりオオカミをけとばしました。
ガツン!
オオカミは気を失ってしまい、気がついたときには、もうお母さんウマと子ウマのすがたは、どこにも見えませんでした。
「だまされた! おれは、なんてバカなんだ」
えものをのがしたオオカミは、トボトボとあるきだしました。
まもなく、牧場(ぼくじょう)が見えてきました。
うれしいことに、まるまるとふとったヒツジのむれが草をたべています。
「しめたっ。あれこそ、ほんとうのごちそうだ」
オオカミは、そっとヒツジたちのそばにちかよっていいました。
「さあ、おまえたちのうちの、だれからたべてやろうか?」
ヒツジたちは、ビックリ。
「ゆるしてください。ぼくたちは、あなたになにもわるいことをしていません。たべるのだけは、かんにんしてください」
「だめだ、だめだ! おれは、もう腹ぺこで、たおれそうなんだから」
オオカミがキバをむくと、ヒツジたちは悲しそうにいいました。
「・・・しかたがありません。でも、さいごのお願いを一つきいてください。ぼくたちは、この牧場をもらったばかりなのですが、死ぬまえに、自分たちの土地をきめておきたいんです。あなたは牧場のまんなかに立っていてください。ぼくたちは、あちこちからはしっていきます。一番早くあなたのところへついた者が、一番いい土地をもらうことにしたいんです」
「わかった。はやくはじめろ」
オオカミは、牧場のまんなかに立ちました。
よーい、ドン!
ヒツジたちは、オオカミめがけてはしっていきました。
そしてオオカミの前からも後ろからも横からも、いっせいにドシン! と体当たりしたのです。
「うーん・・・」
オオカミは気を失ってしまい、気がついたときには、もうヒツジたちはにげたあとでした。
「だまされた! おれは、なんてバカなんだ」
オオカミは、からだじゅうが痛むのをガマンして、またあるきはじめました。
まもなくこんどは、野原でヤギのむれが草をたべているのをみつけました。
「よし、こんどこそ」
オオカミはヤギのそばまでいって、大声でいいました。
「みんな、かくごしろ! かたっぱしから、たべてやるからな」
ヤギたちはブルブルとふるえあがって、オオカミにたのみました。
「どうか、たべないでください。あたしたちは、なにもわるいことはしていません。ゆるしてください」
「だめだ、だめだ! おれは、腹ぺこで死にそうなんだ」
オオカミがキバをむくと、ヤギたちは悲しそうにいいました。
「・・・では、その岩の上で、さいごのお祈りをさせてください」
「よし、早くすますんだぞ」
ヤギたちは岩の上にあがって、メエー、メエーと、お祈りをはじめました。
すると、そのヤギの鳴き声を聞きつけたヤギの番人が、オオカミの頭をふとい棒でなぐりつけました。
ガツン!
「うーん・・・」
やがて気がついたときには、もうヤギのすがたはどこにも見えませんでした。
おなかはペコペコで、おまけにからだは痛くてたまりません。
オオカミはカシの木の下にすわりこんで、悲しそうにいいました。
「ああ、おれはなんてバカなんだ。ウマや、ヒツジや、ヤギにまで、だまされてしまうんだから。これじゃ、いっそのこと死んでしまったほうがいいや」
そのとき、一人のきこりがカシの木にのぼって、枝をきっていました。
きこりは、オオカミのひとり言を聞くと、
「ようし、のぞみどおりに死なしてやるよ」
と、いいながら、オオカミめがけてオノを投げつけました。
ガツン!
オノは、オオカミの頭にみごとに命中。
オオカミは腹ぺこのまま、のぞみどおり死んでしまいました。
おしまい
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