4月4日の日本民話
ウシになったお坊さん
宮城県の民話
むかしむかし、あるところに、とてもやさしいお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
ある日のタ方、お百姓さんの家に、弘法大師(こうぼうたいし)という旅のお坊さんがやってきて、
「すまんが、今夜一ばんとめてください」
と、言いました。
でもお百姓さんはひどい貧乏で、ふとんもお米もありません。
お百姓さんは、こまってしまいました。
「とまってもらうとうれしいが、こんなきたないところにお坊さんをとめては、ばちがあたります」
すると、お坊さんが言いました。
「きたないなんてとんでもない。どこでもいいからとめてください」
「まあ、それならどうぞ、とまってください」
お百姓さんはさっそくおイモをむして、お坊さんに出しました。
「こんなものしかありませんが、よかったらめしあがってください」
「こいつはありがたい。わたしはおイモが大好きでな」
お坊さんは、おいしそうにおイモを食べました。
それからお百姓さんがしいてくれた、たった一枚のボロぶとんによこになり、すぐいびきをかきはじめました。
(こまったお坊さんだ。ごはんを食べてすぐよこになると、ウシになってしまうのに)
お百姓さんがそう思って見ていると、お坊さんの頭からニョキニョキとツノがはえてきて、本当のウシになってしまったのです。
「お坊さん! 大変です! 起きてください!」
お百姓さんがビックリしてお坊さんを起こすと、ウシになったお坊さんが言いました。
「わたしはもう、人間にもどれない。どうかわたしを町へつれていって、売ってください」
「お坊さんを売るなんて、とんでもない!」
朝になると、ウシはさっさと起きあがって外へ出ました。
「さあ、一緒に行きましょう。わたしを売ったお金で、好きな物を買ってください」
「し、しかし・・・」
「さあ、早く」
お百姓さんがしかたなくついていくと、むこうからウシ買いがやってきて、
「こんなりっぱなウシは見たことがない。ぜひ、わしに売ってくだされ」
と、言って、お金をたくさんくれました。
ウシになったお坊さんは、お百姓を見てうなずくと、そのままひかれていきました。
さて、このことを聞いた、となりのお金持ちが、
(おれも一つ、旅のお坊さんを家にとめて金もうけをしてみよう)
と、思い、お坊さんがくるのを、毎日待っていました。
すると、ある日のタ方、旅のお坊さんが通りかかりました。
お金持ちは、あわててお坊さんのそばへ行き、
「これは、お坊さま。長旅はさぞおつかれでございましょう。ささっ、わたしのところへとまってください。ぜひとも、ぜひとも」
と、言って、むりやり家につれてきて、たくさんのごちそうを食べさせると、すぐにりっぱなふとんをひいてねかせました。
ところがいつまでたっても、お坊さんはウシになりません。
「おかしいな。早くウシになれ。ウシになれ、ウシになれ」
と、言っているうちに、何と自分の頭からツノがはえてきて、お金持ちはウシになってしまったのです。
次の日、お坊さんはこのウシをつれて、どこかへ消えてしまったという事です。
おしまい
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