きょうの日本民話
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4月10日の日本民話

げんこつのほうび

げんこつのほうび
新潟県の民話

 むかしむかし、ある国の殿さまが、
《めずらしいものを持ってきたら、ほうびをとらせる》
と、いうおふれを出しました。
 それを聞いた人たちは、めずらしいものを持って、次々と城へ出かけました。
 でも、殿さまはだれよりもお金持ちなので、どんなにめずらしいものでも、城にないものはありません。
「なんだこんなもの、ちっともめずらしくない」
と、言って、みんな追いかえされてしまいました。
 さて、この国にカブをつくっているお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 お百姓さんは、いままで見たこともないような大きなカブをつくろうとして、長い間、苦労を重ねてきました。
 そしてその苦労が実って、大きな岩みたいなカブができたのです。
「これなら、城にはあるまい」
 お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車にのせると、城へ運んでいきました。
 ところが城の門番が、
「なんじゃい、このカブは。カブなんてちっともめずらしくない。さあ帰った、帰った」
と、言って、中へ入れてくれません。
「でも、おらがいっしょうけんめいつくったカブです。こんな大きなカブはほかにありません。殿さまに一目、見ていただくだけでいいのです」
 お百姓さんがあまりにもいっしょうけんめいたのむので、門番は殿さまのところへ行って、大きなカブのことを話してくれました。
 すると、殿さまはよろこんで、
「すぐ、持ってくるように」
と、言いました。
「わしのおかげで、殿さまが見てくださるそうだ。いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分よこせ。わかったな!」
 門番は、おどすように言いました。
「はい、しょうちしました」
 お百姓さんは、城の庭へ荷車をひいていきました。
 殿さまは荷車の上のカブを見て、目を丸くしました。
 これほど大きなカブは、見たことも聞いたこともありません。
「これはめずらしい。よくぞここまでそだてあげた。ほうびをとらすから、何でもほしいものを言うがよい」
 殿さまは、ニコニコして言いました。
 でも、お百姓さんはほうびよりも、大いばりしている門番をこらしめてやろうと思いました。
 そこで、おそるおそる殿さまにわけを話して、
「おらに、げんこつを十個ください」
と、言ったのです。
「よし、よし。のぞみとあらば、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」
 お百姓さんは、殿さまの前に進みでて頭をさげました。
 殿さまはお百姓さんの頭を、そっと十回たたいて言いました。
「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとでけらいにとどけさせよう」
「ありがとうございます」
 お百姓さんは喜んで荷車をひき、城の庭を出ていきました。
 門のところへくると、門番が待ちかねていたように言いました。
「どうじゃ。殿さまにほうびをいただいたか?」
「はい、おかげさまで」
「それじゃ、やくそくどおり半分もらおうか」
 門番はお百姓さんの前に両手を出した、そのとたん、お百姓さんはこぶしで、門番の頭を思いきりなぐりつけました。
「な、なにをする!」
 門番は、頭をかかえてすわりこみました。
「おらが殿さまからもらったほうびは、げんこつが十個だ。半分あげるからかくごしろ!」
 お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、あと四回、思いっきり門番の頭をなぐりつけました。
 畑仕事できたえた力でなぐられては、さすがの門番もたまりません。
 そのままひっくりかえって、のびてしまいました。
「ざまあみろ」
 気持ちがスッキリしたお百姓さんは、家に帰っていきました。
 家に帰るとすぐに、殿さまからのほうびのお金がとどきました。
 よろこんだお百姓さんは、そのお金で村の人たちにごちそうをしたという事です。

おしまい

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