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        福娘童話集 >イースター たまごのお話し >大平長者 
         
      たまごのお話し 第 5 話 
       
        
       
大平長者 
和歌山県の民話 → 和歌山県情報 
      
      
       むかしむかし、田辺(たなべ)というところに、佐竹某という大金持ちが住んでいました。 
 この男は大平の高台に立派な別荘を建てて、ぜいたくな暮らしをしていたので、村人たちは『大平長者』と呼んでいました。 
 
 長者は毎晩、庭に定紋(しょうもん)を染め抜いた、ちりめんの幕をはり、黄金の太鼓を打ち鳴らすと、山海の珍味を食べて酒を飲んでいました。 
 
 ある夏の事、庭に出てみると、松の木にツルが巣をつくっています。 
「おおっ、ツルとは縁起がよい」 
 最初の間は喜んでいましたが、そのうちに長者は、ツルの肉を食べてみたいと思う様になりました。 
 けれどもツルを殺すのは、禁止されています。 
「うむ。ツルは食べたいが、食べた事が知れると役人に捕まってしまうし。何かよい方法はないだろうか?」 
 長者は毎日、あのツルを食べたいと思い続けていました。 
 
 ある日、長者が巣の中をのぞいてみると、ツルが卵を産んで温めています。 
 すると長者は、こんな事を考えました。 
「ツルを食べる事は御法度(ごはっと)だが、卵ならよかろう」 
 そしてアヒルの卵を用意すると、こっそりツルの卵と入れ替えて、そのツルの卵を食べてしまったのです。 
 
 それから何日かたって、巣の中の卵がかえりました。 
 しかし産まれて来たのはアヒルなので、親ヅルはびっくりです。 
 そして次々と産まれてきたヒナも、みんなアヒルです。 
 親ヅルは悲しそうに鳴くと、アヒルのヒナをみんな突き殺してしまいました。 
 
 この事があってから、あれほどぜいたくな暮らしをしていた長者大平はだんだん貧乏になり、間もなく別荘も本宅も他人の手に渡ってしまったのです。 
      おしまい 
         
         
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