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5年生の江戸小話(えどこばなし)

おとしもの
主人とこぞうが、浅草(あさくさ)の観音(かんのん)さまに、おまいりに行きました。
浅草はもう、たいへんなにぎやかさで、けいだいは、人でごったがえしています。
こぞうは主人のそでをひっぱって、いいました。
「だんなさま、だんなさま。こう、こんざつしておりますと、何か、落とすかもしれません。落としものには、お気をつけください」
「おお、よく気がついた。わしはおとさぬが、先ほどおまえにあずけたお金は、だいじょうぶか?」
するとこぞうは、胸(むね)を張(は)って、
「はい、それはもう、とっくにおとしました」
おしまい

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