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ヘルメスと彫刻家
商売の神ヘルメスは、あると時、自分が人間たちの間で、どのくらい尊敬(そんけい)されているかを知る為に、人間の姿になって一人の彫刻家のアトリエヘやって来ました。
見ると、神々の中で一番偉いゼウスの像があります。
「これは、いくらで売るのかね?」
と、ヘルメスは尋ねました。
「1ドラクマです」
ヘルメスは、にやりと笑って、
「じゃあ、そっちにあるヘラ(→ゼウスのおくさん)の像はいくらだ?」
「こっちの方が高いですよ」
ヘルメスは、自分をかたどった像もあるのに気がつきました。
何しろ自分は商売の神さまだし、ゼウスの神のお使い役も務めるくらいだから、きっと特別に人間からあがめられているだろうと思って、
「このヘルメスは、いくらだ?」
と、尋ねました。
すると彫刻家は、
「そうですねえ。ゼウスとヘラと二つとも買ってくれたら、これはおまけとして、ただであげますよ」
「・・・・・・」
このお話しは、誰からも尊敬されていないのに自分だけが偉い様な顔をしている、うぬぼれ屋に聞かせるお話しです。
おしまい
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