|
 |
福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 6月の江戸小話 > ちかづきのしるし
6月30日の小話

ちかづきのしるし
ある医者が、ひっこしてきました。
ひっこしをしたことはしたのですが、ちかづきのしるしに近所にくばるものが、何もありません。
そこで、商売ものの薬をくばることにしました。
となりの家に持ってゆきますと、となりの主人は、
「ありがとうございます。ですが、わたしどもは、やまいを持っておりませんので、お薬をいただくのは、よしましょう」
と、いいます。
すると医者は、すました顔で、
「どうぞ、ご安心を。わしの薬は、飲むと、たちまち、ぐあいが悪くなりますから」
おしまい
|
 |
|