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福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話
三つの願い事
イギリスの民話→ イギリスの情報
むかしむかし、イギリスの小さな村の小さな家に、ある夫婦が暮らしていました。
今日の晩ご飯は、いつものように薄いスープと小さなパンだけです。
「さあ、いただきましょう」
「ああ」
その時、
トン、トン
トン、トン、トン、トン
と、戸を叩く音がしました。
「あら、誰かしら?」
おかみさんが戸を開けてみると、背の低い男が立っていました。
「わたしは旅の者だが、何か食べ物をわけてもらえないですか?」
ちょっと怪しい男ですが、おかみさんはニッコリ笑って言いました。
「ちょうどいま、ご飯にするところなんですよ。といっても、スープとパンしかありませんけど。それでよければ一緒にどうぞ」
「スープとパンですか。それはありがたい」
男が喜んで家に入ると、おかみさんは自分たちのスープとパンを少しづつ分けて男にごちそうしました。
男は食べ終えると、夫婦に言いました。
「ごちそうさま。とても助かりました。食事のお礼に、三つの願い事をかなえてあげましょう。明日の朝になったら、どんな事でも三つ願い事がかないますよ。それでは、さよなら」
そして男は、出て行ってしまいました。
「ねえ、あなた。願い事がかなうって、本当かしら?」
「さあ、どうだろうね。まあ、朝になればわかるさ」
夫婦はそう言って、さっさとベッドに入って寝る事にしました。
次の日の朝になりました。
だんなさんがテーブルにつくと、朝ご飯はまたスープとパンです。
だんなさんはつい、一人言を言いました。
「やれやれ、またスープか。たまには、うまいプディングが食べたいなあ」
すると不思議な事に、大きくておいしそうなプディングがテーブルに現れたのです。
「おお、これは素晴らしい」
だんなさんは喜びましたが、でもおかみさんはかんかんに怒りました。
「何をしているのよ! まったく、あんたって人は本当に考えなしね。これで願い事が一つ、無駄になったじゃないの!」
「何を言う。無駄なんかじゃないぞ。ちゃんとプディングが出てきたじゃないか」
「プディングが何よ! そんなもの、あんたの頭の上に乗っかっていればいいのよ!」
するとプディングがピョコンと跳び上がって、だんなさんの頭に飛び乗りました。
「あっ!」
だんなさんはプディングを取ろうとしましたが、どんなに引っ張ってもプディングはぴったりと頭にくっついて離れません。
「何をやっているんだ! お前だって考えなしだ。せっかくのプディングが食べられなくなったじゃないか。しかも願い事が一つ無駄になったじゃないか」
だんなさんが文句を言うと、おかみさんも言い返しました。
「何よ! だいたい、あんたが最初に良い願い事をしないからいけないのよ。例えば、金貨を山ほどもらうとか、お城みたいな家をお願いするとか。それをたかがプディングだなんて。いい、三つ目の願いはわたしが言うわよ。えーと、あたしが一番欲しい物は・・・」
おかみさんが願い事を言おうとすると、だんなさんがあわてて叫びました。
「三つ目の願い事は、おれの頭からプディングが取れる事だ!」
するとプディングはだんなさんの頭から取れて、ふわりとテーブルの上に戻りました。
「やれやれ、これでプディングを食べる事が出来るぞ」
うれしそうに言うだんなさんを見て、おかみさんは頭をかきながらニッコリ微笑みました。
「あなたってば、本当に欲がないんだから。・・・でも、まあいいわ。お金持ちにはなれなかったけど、プディングが食べられるんだから。さあ、これで朝ごはんにしましょう」
二人が食べたプディングは、今まで食べた事がないほど、とてもおいしかったそうです。
おしまい
似たようなお話しが、フランスにもあります。
→ 三つの願い
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