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サルの王さま

サルの王さま
インドの昔話 → インドの国情報

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 むかしむかし、インドのガンジス川のほとりに、たくさんの実がなった一本のマンゴーの木が生えていました。
 そのマンゴーの実のおいしさといったら、一度食べたら一生忘れられないほどです。
 ある時、サルたちがマンゴーの実を食べにやってきました。
「ああ、なんてうまい実だろう」
「こんなにおいしい実は、はじめてだ」
 むちゅうで食べているサルたちを見て、王さまザルは考えました。
(こんなにうまいマンゴーの実が川に落ちて、人間たちのところへ流れていったら、人間たちが取りに来るだろう。それはまずいな)
 王さまザルは、すぐにサルたちを集めて言いました。
「川の上にのびた枝になっている実は、1つ残らず取ってしまいなさい」
「はい、王さま」
 サルたちは、さっそくいわれたとおりにしました。
「よしよし、これで安心だ」
 ところがサルたちは、たった1つの実を見落としていたのです。
 その実はあまくうれて、ある日、ポタリと枝から川へ落ちました。
 マンゴーの実は、そのまま人間がくらしている町まで流れていきました。
「おや? これはこれは、実にみごとなマンゴーの実だ」
 漁師(りょうし)はマンゴーの実をアミですくい上げると、王さまのところへ持って行きました。
「ほう、これはすばらしい。こんなにうまいマンゴーははじめてだ」
 すっかり気に入った王さまは、家来を引き連れてマンゴーの木を探しに行きました。
 いく日かたって、王さまはついに、あのマンゴーの木を見つけました。
「あったぞ。すばらしい、あんなに実がなっている」
 王さまたちは、いそいでマンゴーの木にかけよりました。
 ところが木のそばまで行くと、たくさんのサルがマンゴーの実をおいしそうに食べているではありませんか。
「王さま、どういたしましょう?」
「むむ、サルのくせになまいきな。矢でうちおとしてしまえ!」
 家来たちはさっそく、サルたちめがけて弓矢を放ちました。
 それに気づいたサルたちは、王さまザルのところへ知らせに行きました。
「たいへんです! 人間たちが、私たちを殺そうとしています」
「あわてるな、わたしにまかせなさい」
 王さまザルはマンゴーの木に登ると、飛んでくる矢を長いしっぽと手を使って打ち落とし、仲間のサルたちを助けました。
「さあ、いまのうちに逃げなさい」
 サルたちは、つぎつぎに逃げていきましたが、みんなが逃げるまでは、まだ時間がかかります。
 やがて王さまザルのからだに何本も矢がささりましたが、王さまザルはがんばって、仲間のサルたちを守りました。
 それを見ていた人間の王さまは、家来たちに矢を打つのを止めさせました。
「まて、矢を打つのを止めるのだ。それより、あの王さまザルをここへ連れてきなさい」
 家来たちは、傷ついて動けなくなった王さまザルを連れてきました。
 人間の王さま、王さまザルにたずねました。
「なぜ、自分の体を痛めてまで、仲間を助けたのかね?」
 王さまザルは、苦しい息をはきながら答えました。
「わたしは王です。仲間のサルたちを守るのが、わたしのつとめです」
「おお、なんとりっぱなサルだろう。わたしも見習わなければ」
 感動した王さまは、王さまザルの手当をしてやると、マンゴーには一切手をつけず、そのまま自分の国へ帰っていきました。
 それからは、どんなときでも人びとの幸せを一番に考える、心やさしい王さまになりました。

おしまい

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