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おばあさんの頼み
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むかしむかし、あるところに、大きな大きな墓場がありました。
ここにはたくさんの死んだ人の魂が眠っていて、どの魂もみんな、もう一度生き返りたいと思っていました。
ある日の事、一人のおばあさんが死んで、この墓場にほうむられました。
でも、おばあさんは、永い眠りにつこうとはしませんでした。
「ああ、生きたい。生きたい」
おばあさんはそう言いながら土をかきわけて、お墓の中から上半身を出して来たのです。
ところが外はたいへんに寒かったので、おばあさんは上半身を出したままブルブルと震えました。
「ああ、寒い、寒い」
するとそこへ、一人の男の子が通りかかりました。
おばあさんは、男の子に言いました。
「坊や。
良い子だから、ここに火を持って来ておくれ。
この冷え切った体を、暖めるから。
体が暖まればここから出られるし、ここから出ればあたしは生き返られるんだ」
「・・・・・・」
でも男の子は、首を横に振りました。
「坊や、お願いだから火を持って来ておくれよ」
「・・・・・・」
おばあさんがいくら頼んでも、男の子はおびえたように首を横に振るだけです。
「ああ、こんなに寒くては、まだ地面の中にいた方がましだね」
寒さが我慢出来なくなったおばあさんは、仕方なく、またお墓の中に入って行きました。
おばあさんはそれっきり、二度と外へは出て来ませんでした。
おしまい
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