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10月6日の日本の昔話

京のカエル大阪のカエル

京のカエル大阪のカエル

 むかしむかし、京都に一匹のカエルがおりました。
 もう、長いこと京都に住んでいたので、どこかちがう所へいってみたいと思っていました。
 あるとき、大阪はとてもいい所だという話を聞きました。
「よし、ひとつ、大阪見物にでも、いってこよう」
 思いたったら、もうじっとしていられません、さっそく出かけることにしました。
「よせよせ、大阪まではとても遠くて、たいへんだぞ。ケロ」
と、仲間のカエルがいいました。
「なあに、へっちゃらさ。大阪見物の話を聞かせてやるから、待っていな。ケロ」
と、いって、そのカエルは、ピョンピョンと、出かけていきました。
 ま夏のことなので、お日さまはカンカンてるし、道は遠いし、カエルはくたびれてしまいました。
 それでも、大阪をひと目見たいものと、ピョンピョンと歩いていきました。
 さて、大阪にも一匹のカエルがおりました。
 そのカエルも、もう長いこと大阪に住んでいましたので、どこかちがう所へいってみたいと思いました。
 あるとき、京都はとてもいい所だという話を聞きました。
「よし、京都見物にでもいってこようか。ケロ」
 さっそく、出かけることにしました。
「よせよせ、京都まではとても遠くて、たいへんだぞ。ケロ」
と、仲間のカエルがいいました。
「なあに、へっちゃらさ。京都見物の話を聞かせてやるから、待っていな。ケロ」
と、いって、そのカエルも、ピョンピョンと、出かけていきました。
 お日さまはカンカンてるし、道は遠いし、カエルはくたびれてしまいました。
 それでも、京都をひと目見たいものと、カエルは、ピョンピョンと歩いていきました。
 京都と大阪の間には、天王山(てんのうざん)という山があります。
「この山をこせば大阪だ。ケロ」
 京都のカエルは元気を出して、よっこら、やっこら、山を登っていきました。
「この山を越せば京都だ。ケロ」
 大阪のカエルも元気を出して、よっこら、やっこら、山を登っていきました。
 お日さまは暑いし、山道は急だし、京都のカエルも大阪のカエルもクタクタです。
 二匹とも、やっと天王山のてっペんにたどり着き、そこでバッタリ出会いました。
「あなたは、どこへいくんですか? ケロ」
「京都見物ですよ。ケロ」
「およしなさい。京都なんてつまりませんよ。わたしは大阪見物にいくんですよ。ケロ」
「あなたこそ、およしなさい。大阪なんてつまりませんよ。ケロ」
 そこで、京都のカエルは立ちあがって、大阪のほうを見ました。
「ほんとうだ。よく見ると、大阪も京都とたいして変わらないや。ケロ」
 大阪のカエルも、立ちあがって京都のほうを見ました。
「ほんとうだ。よく見ると、京都も大阪とたいして変わらないや。ケロ」
 それなら、いってもつまらないと、二匹のカエルは、もときた道を帰っていきました。
 でも、二匹のカエルが見たのは、ほんとうは、自分たちの町だったのです。
 えっ? なぜって、カエルの目玉は頭の上についているでしょう。
 だから、立ちあがると、後ろしか見えないからです。

おしまい

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