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10月6日の小話

十二味のとうがらし

十二味のとうがらし

 旅の男が、えん日でにぎわうお寺の前をとおりかかると、とうがらし売りが声をかけました。
「おきゃくさん、世にもめずらしい、十二味とうがらしはいかがですか?」
「なに? 十二味とうがらしだと? 七味とうがらしなら、どこでもうっているが、十二味とはめずらしいな。よし、みやげにひとふくろ、つくってくれ」
「へい、ではさっそく、おつくりいたしましょう。まず、『赤とうがらし』に、『アサの実』に、そして『青のり』に、『ちんぴ(みかんの皮をほして、こなにしたもの)』に、『さんしょ』を入れて。しまいに、『ケシ』と『すりゴマ』を、よくまぜあわせてと、へい、おまちどおさん」
「おいおい。それでは、どこにでもある七味じゃないか。『赤とうがらし』、『アサの実』、『青のり』、『ちんぴ』、『さんしょ』、『ケシ』、『すりゴマ』。やっぱり、七味ではないか。いったい、どこが十二味とうがらしだ。でたらめぬかしたな!」
 たびの男がくってかかりました。
 ところが、とうがらしうりは、ニヤリと、わらい。
「きょうは、ごらんの人出で、だいぶ、ほこりがたっています。したがって、七味とうがらしに、少々のごみ(五味)もはいっておりましょう。七味と五味で、十二味とうがらしでございます」

おしまい

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