
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話 > お金入りの米だわら
1月14日の日本民話
  
  
  
  お金入りの米だわら
  石川県の民話 → 石川県情報
 むかしむかし、ある村のお寺に、とても力持ちの和尚(おしょう)さんがいました。
   もう、すっかり年をとっているのに、重い米だわらをヒョイと持ちあげてしまうのです。
   そればかりか、力の弱い若者たちを見ては、
  「若い者が米だわら一つ持ちあげられないでどうする。そんなこっちゃ、一人前のお百姓(ひゃくしょう)さんになれないぞ!」
  と、しかりつけるのです。
   だから村の若者たちは、おもしろくありません。
  「年よりの和尚さんからバカにされるなんて、くやしいなあ」
  「そうだ。なんとかして、和尚さんをやっつける方法を考えよう」
   若者たちが集まって、相談しました。
   すると、一人の若者が言いました。
  「いくら和尚さんだって、お金入りの米だわらはかつげまい」
  「お金入りの米だわらだって?」
   みんな、首をかしげました。
  「そうさ、米だわらの中に、米と一緒にお金をどっさりと入れておくのさ。すると米だわらは何倍も重たくなる。そいつを和尚さんにかつがせるんだ」
  「なるほど」
  「わかったら、できるだけ重いお金を集めてこい」
   若者たちは手分けして、重い銅のお金をたくさん集めてきました。
  「でも、このお金をとられてしまったらどうする?」
  「大丈夫さ。いくら和尚さんでも、こんな物を持てるはずがない」
  「なるほど、これはたしかに重い。とても持ちあげられそうもないや」
   そこでみんなは、お金の入った米だわらをお寺へ持っていきました。
   すると、和尚さんが出てきて、
  「なんだ。いい若い者が、たった一ぴょうの米だわらをみんなでかつぐとは。まったくなさけない」
  と、言いました。
   若者の一人が、くやしいのをがまんして言いました。
  「とんでもない。この米だわらは特別で、いくら力持ちの和尚さんでも一人ではかつげません。もし一人でかつげたら、わしらどんなことでもしましょう。でも、かつげなかったら二度と、わしらをしかったりしないでくださいよ」
  「よしよし、わかった、約束しよう。何が入っているか知らんが、この米だわらを一人でかつぐことができたら、この米だわらをもらってもよいかな?」
  「いいですとも。かつげるものならね」
  (いくらなんでも、こんなに重たい物をかつげるはずはない。この勝負はおれたちの勝ちだ)
   みんなは、そう思いました。
  「それじゃあ、かつくぞ。ペッペッ」
   和尚さんは両手にすべり止めのつばをつけると、米だわらをグイッとつかみました。
  「おおっ! なるほど、こいつは重いわい」
   それを見て、若者たちは顔を見合わせました。
  (見ろ。やっぱり、持ちあがらないぞ)
  (いまに手をはなすぞ。手をはなしたら、みんなで大わらいしてやろう)
   ところが和尚さんは、重い米だわらをヒョイと持ち上げると、肩にのせました。
  「あはははは、多少は重たいが、この程度ならあと三つはかつげるぞ。さて、やくそくどおりこいつはもらったよ」
と、言って、そのままお寺に帰っていきました。
おしまい