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8月19日の日本民話
  
  
  
  長すぎたわらぞうり
  高知県の民話 → 高知県情報
 むかしむかし、ある大きな屋敷に、万六(まんろく)というお百姓(ひゃくしょう)さんが働いていました。
   ところが、この屋敷の主人はひどいわがままで、少しでも気にいらないことがあると、すぐどなりつけるのです。
   ある時、主人が万六を呼んで、
  「明日の朝、早くに出かけるから、お城までのわらぞうりをつくっておくように」、
  と、言いました。
   万六は、さっそくワラを山ほど持ってきて、やわらかく打ちはじめました。
  「あんなにたくさんワラを打って、どうしようというのだろう?」
   主人は、不思議に思いましたが、
  「まあいい。きっと、たくさん作るつもりだろう」
  と、そのままにしておきました。
   ところが万六は仕事場にこもって、夜も寝ないでわらぞうりをあんでいます。
  「うむ、なかなかの働き者じゃ」
   主人は感心して、寝床に入りました。
   次の日の朝早く起きてみると、万六はまだ仕事をつづけています。
  「万六、そろそろ出かけるから、わらぞうりを持ってきてくれ」
   主人が言うと、万六がこまったように言いました。
  「だんなさま、きのうから寝ないでわらぞうりをあんでいますが、まだできません」
  「そんなバカな。三足もあれば、たくさんなんだぞ」
   主人は仕事場にきてみてビックリ。
   万六は、まるでおびのように長いわらぞうりをつくっていて、後ろにうず高くもりあげているのです。
  「万六、そりゃなんだ?」
   すると万六さんは、いよいよこまって、
  「すみません。お城までのわらぞうりと言われたので、いっしょうけんめいつくりましたが、まだこれだけで」
  と、言って、あみつづけのわらぞうりの先をふって見せました。
  「城まで続くわらぞうりなど、誰がつくれと言った!」
   だんなさんは、すっかり腹を立てましたが、いまさらどうすることもできません。
  「しかたがない。わらぞうりはどこかで買うとしよう」
  と、言って、古いわらぞうりをはいて出かけていきました。
   万六はそれを見て、ニヤリと笑いました。
  「ふん、からかわれているとも知らずに」
 イタズラでも一生懸命する、万六でした。
おしまい