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12月22日の世界の昔話

うかれヴァイオリン

うかれヴァイオリン
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 むかしむかし、ある若者が、お百姓(ひゃくしょう)さんにやとわれました。
 三年もの間、朝から晩まで働き続けましたが、お百姓さんはお給料をくれません。
 そこで若者が文句をいいますと、やっとのことで銅貨を三枚だけくれました。
 若者はそれを持って、旅へ出ました。
 しばらくいくと、道ばたの小人に声をかけられました。
「どうか、お金をめぐんでくだされ」
「うん? これかい? いいよ」
 人のいい若者は、三枚の銅貨を気前よくあげました。
 すると、小人はたいそう喜んで、
「お礼になんでもさしあげますよ、ほしいものをおっしゃってください」
と、いうので、若者は答えました。
「じゃ、ヴァイオリンをくれよ。それをひくと、みんながおどりだすようなやつをね」
 小人は背中にせおった袋からヴァイオリンを取り出すと、それを若者に渡しました。
 若者はうれしくなって、楽器をかなでながら旅を続けました。
 すると、年よりのきこりが若者をよび止めました。
「おまえさん、銀貨一枚やるから、ここの木を切っとくれよ」
「いいよ」
 若者はひきうけると、おじいさんのオノを手に取って、大木を切り倒してあげました。
 すると、年老いたきこりは、
「なんだ。こんなにかんたんに切り倒せるんだったら、銅貨一枚でよかろう」
 銀貨をくれるはずが銅貨だったので、若者は不満です。
 そこで手にしたヴァイオリンをひきだしますと、きこりがおどりはじめたのでした。
「ど、どうしたんじゃ? わしはおどりたくなんかないぞ!」
 きこりはわめきましたが、からだがいうことをききません。
 そのうち、息がくるしくなると、
「助けてくれ! ヴァイオリンをやめてくれ!」
 ひめいをあげはじめたので、若者がやめてやると、きこりはやっと、約束どおりの銀貨を手渡したのでした。
 けれどきこりは若者のことをうらんで、お役所にかけこみました。
「旅の若者が、この年よりから銀貨をだまし取りました。どうかつかまえてください!」
 役人たちは若者を追いかけると、すぐにつかまえてしまいました。
「年よりをだますようなやつは、死刑だ!」
 役人たちにいわれて、若者はたのみました。
「死ぬ前に、一度だけヴァイオリンをひかせてください」
「よろしい」
 きこりが止めるのもきかずに、役人がヴァイオリンをわたします。
 若者はそれを受け取ると、ヴァイオリンをひきました。
 そのとたん、役人たちばかりか町じゅうの人びとがおどりはじめ、やがてイヌやネコまでもがおどり出したのです。
「た、たのむ。ヴァイオリンをやめてくれ!」
 役人たちは、若者にたのみました。
「いいですよ。ぼくがお金をぬすんだんじゃないって、はっきりいってくれればやめます」
「わかった。あんたは悪くない」
 役人たちが答えたので、若者はヴァイオリンをやめると、また旅をはじめました。

おしまい

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