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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 少女ギツネ 
      2009年 2月6日の新作昔話 
          
          
         
  少女ギツネ 
  京都府の民話→ 京都府情報 
       むかしむかし、仁和寺(にんなじ)の東にある高陽川(こうようがわ)のほとりに、夕暮れ時になると、かわいらしい少女に化けたキツネが現われて、馬で京にむかう人に声をかけるという噂がたちました。 
        「どうぞ、私をお連れ下さいませ」 
         そう言って馬に乗せてもらうとすぐに姿を消して、乗せてもらった人をびっくりさせると言うのです。 
         ある日、一人の若者が、馬でその場所を通りかかりました。 
         そこへいつものように少女ギツネが現われて、若者に、 
        「そこのお馬の人、私をあなたさまの後ろへ乗せてはいただけませんでしょうか?」 
        と、声をかけました。 
        「ああっ、いいですよ」 
         若者はこころよく引き受けると、その少女を自分の馬に乗せてあげました。 
         ところがなんとそのすぐあとで、すでに用意していたらしいひもを取り出すと、その少女を馬の鞍(くら)にしばりつけてしまったのです。 
        「よし、これで逃げられまい」 
         実はこの若者は、その少女がキツネだという事を仲間から聞いて知っていたのです。 
         そしてそのいたずらギツネを捕まえてやると仲間に宣言して、こうしてやってきたのでした。 
         さて、その若者と少女ギツネが京にもどってきた頃には、日もとっぷりと暮れてきました。 
         西の大宮大路(おおみやおおじ)あたりまで来た時、たくさんのたいまつを灯した行列に出会ったので、若者は横道にそれてまわり道をして、仲間の待つ土御門(つちみかどもん)へと急ぎました。 
         若者の仲間たちは、たき火を囲んでいました。 
        「おお、約束通りキツネを捕まえてきたぞ。逃げられないように、みんなで取り囲んでくれ」 
         仲間たちが周りを取り囲んだのを見ると、若者は少女ギツネをしばっているひもを解いて放してやりました。 
         しかしそのとたん、狐も仲間のみんなも、すーっと消えてしまったのです。 
        「なに! ・・・しまった、たいまつの行列も仲間たちも偽物。おれはキツネに化かされてしまったのか!」 
         地団太ふんでくやしがった若者は、数日後、同じ場所へ出かけていき、少女ギツネを再び捕まえてきました。 
         そして今度こそはだまされないようにと注意しながら、本当の仲間の所へつれていき、みんなでさんざん少女ギツネをこらしめてから放してやりました。 
         それからしばらくたって、若者はその少女ギツネの事が妙に気にかかり、例の高陽川(こうようがわ)のほとりまで様子を見にいきました。 
         するとやっぱり、いつものようにあの少女ギツネが現われました。 
         でも着物はうすよごれ、顔色もよくありません。 
         そして、若者がやさしい言葉をかけても、 
        「どんなに乗せてもらいたくても、またこの前のように、こらしめられるのはこわいからいや」 
      と、言って、悲しそうな目で若者を見ると、しょんぼりと肩を落として姿を消し、二度と現われる事はなかったそうです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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